看護基礎教育に意図的、体系的に計画された終末期患者の看護教育の必要性が強調されている。当校においても、平成元年より、体系的、段階的カリキュラムを組み立てて「生と死の教育」を実施してきた。その最終段階として終末期看護の臨床実習を設けている。
臨床実習において、集団思考による学習の成果を期待する場面としてカンファレンスがある。「集団思考は学習における認識の多様性や豊富さを導き、思考の広がりや深まりが期待できる」といわれている。当実習でも、このような効果を期待してカンファレンスを行っている。しかし、その効果は、指導方法に係るところが大きい。そこで、当校の終末期看護の臨床実習におけるカンファレンスの教育効果を明らかにし、今後の方向性を検討したのでここに述べる。
現在の助産婦教育の中で、学生が重点的に主体性をもって問題解決学習ができる継続管理妊婦(以下継続妊婦)のケア実習は、唯一の貴重な実践的教育の機会となっている。
助産婦教育においては、妊婦には妊娠、出産が満足できるものとなるように、学生には学習の目標が達成できるように常に教育環境を整える必要がある。
以前に継続管理教育においては調査した結果、学生と妊婦が交流する場の必要性が明らかになり、学生と妊婦が相互理解を深め、学生の学習効果を高める目的で新しく「妊婦の会」を位置づけ教育を行った。その結果評価すべき効果をもたらすことができたので報告する。
当校では、1989年度より総合看護を志向した全人的・主体的教育方法として1年次後期において、家庭訪問実習を実施している。本実習は、看護の対象を、対象および家族、地域社会の相互作用の中でとらえ、健康上の問題を分析することで、看護の体系的理解をはかりたいとしている。5回の家庭訪問を実施し、本人あるいは家族からインタビューしたことを記録し、分析して問題は何かを明らかにしている。しかし、1年次後期ということで、学生自身の看護に対する見方は確立されておらず、看護の視点からの分析が弱い傾向にある。教育する側の工夫が要求される。カリキュラムの説明や実施方法の工夫、教員の記録への監査や助言、講義との関連などについて検討を加えてきた。今回、家庭訪問実習を通して総合看護の概念に基づいた看護の視点の形成について、初年度からの問題点と取り組みとその結果について述べる。
心理的な理由により学校にいけない状態を登校拒否という。学校恐怖症、不登校、学校ぎらい(文部省)などともいわれている。このような学校へ行けない子供の原因・要因としては、分離不安・学校恐怖・パーソナリティー・対人関係・親子関係・精神病的傾向があげられている。当小児病棟においても、不登校で入院してくるケースがあとをたたない。私達は、今回、精神的に未成熟であるため学校生活に適応できず身体症状を呈して入院してきた患児にかかわった。そのかかわりを通し、患児が自らの問題をみつめ、自らの力で解決し乗り越えることができた過程を一貫して見守り、ケアにおける重要な教訓を学んだのでここに報告する。
当校の臨床実習は、島根県立中央病院で行っている。実習病院には計12名の臨床実習指導者が専任で配置されており、当校の専任教員と共に実習指導を担当している。昭和53年度からは規約を定め、島根県立中央病院の実習指導者と当校の専任教員が連携を深め、教育の質の向上を図る目的で、学院主催の臨床指導者会議(以下会議と称す)を1ヶ月1回、専任教員と実習指導者の自主運営による臨床指導者研究会(以下研究会と称す)を1ヶ月3回、定期的に毎週開催している。
今回、過去5年間の会議並びに研究会の会議録の分析と、専任教員・臨床実習指導者へのアンケートから、会議並びに研究会の活動が、実際には教育にどのように反映されているかを考察したので報告をする。
当院は、雲南三郡の9町1村からなる組合立病院であり、地域で唯一の総合病院及び救急告示病院として雲南地域における中核病院的役割を担っている。診療圏地域の一帯は、過疎化や高齢化が進み老年人口比は22.0%にも及ぶ。住民の健康状態は、脳卒中や心疾患の予備軍ともなる高血圧者率が26.3%と高く、当院入院患者においても慢性疾患や寝たきり患者数の増加が、近年問題視されるようになってきた。
このような背景から当院においても平成4年度より訪問看護事業を開始することとなった。このモデル事例へのかかわりから、病院が行う訪問看護のあり方、その方向性と今後の課題について検討を行ったので以下に報告する。
インスリン依存性糖尿病で1ヵ月近く入院した中学2年生の子どもが、退院後学校に行かなくなった。入院中この子どもに接した看護婦には思ってもいない経過であった。
当院の小児科は産婦人科と混合の病棟で、未熟児センターを併設している。平成4年度の小児科の平均在院日数は9.9日である。年齢層は乳幼児が90パーセントを占める。インスリン依存性糖尿病という慢性疾患で、当病棟としては長期の入院となった中学生の看護はこれで良かったのか、我々は、入院中の看護記録からこの事例を振り返り、長期入院の子どもの看護についてまとめた。
20世紀末、医療・看護領域における医学理論、医療看護技術の進歩は、臨床医学領域を中心に飛躍的に発展している。これは同時に公衆衛生学・公衆衛生看護学領域にも強いインパクトを与え、そのアイデンティティとともに、卒前・卒後教育の在り方の抜本的改革を迫っている。
また、高齢化、情報化が急速に進むなかで、病院や地域コミュニティにおけるチーム・プラクティスを前提とした臨床医学教育と公衆衛生・公衆衛生看護学教育との連携、保健・医療・福祉の総合化が重要な社会的ニーズとなっている。
市町村、保健所、産業職場、学校、病院における公衆衛生看護教育は、益々重要になっているにもかかわらず、その卒前および卒後教育に関する教育変革は、教育理論、コミュニティケア及びファミリヘルスケアなどのケアモデル、ケースマネージメント、カウンセリングやヘスルエデュケーション技術など、先進諸外国に比べ遅れをとっていることは否めない。
私達は、島根県において公衆衛生看護教育におけるCommunityを基盤とした教育(Community-based Education)を1965年から続けてきた。実習と平行して従来の教官から一方的に、膨大な知識を講義し、暗記を中心とする講義方式を変革する必要性を感じていた。
すでに医学教育では、カナダ・アメリカ・イギリスなどチューター制度によるStudent Lectureが行われ、よい効果をあげている。島根医科大学でも第4学年を対象として環境保健医学教育において1989年から試みたところ、学生の主体的学習態度の確立、問題解決能力の向上、知的好奇心・探求心の深化など一定の教育効果を得て現在に到っている。
本学院でも、試行的に学生が教科書にそいながら具体的テーマを中心にして主体性を持って学習し、教官の助言を得ながら講義を行う「学生主体のStudent Lecture」を1991年から試み、従来の知識詰め込み型教育から、主体性と創造性を開発する教育方法として有効と考えたので、その現状と課題を紹介する。