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『日本医学看護学教育学会誌』第31号No.4(2023年 3月 1日発行)

報告 病院における認知症高齢者の転倒予防のための看護ケア項目のデルファイ法による同定 古賀美紀,津本優子,宮本まゆみ,小林幸恵,坂根可奈子,玉川優芽,森脇早紀,内田宏美
報告 消極的職業選択動機で入学した看護系大学生の職業決定プロセス 牛塲かおり,林智子,井村香積
報告 臨地実習で看護学生の自律的質問に影響する要因 藤川真紀,花田妙子
報告 手術室看護師が実践している創傷予防ケア 古川智恵
報告 看護系大学に所属する若手教員の看護大学教員能力の関連要因 土肥美子,細田泰子
報告 オンライン授業を受けた看護系大学1年生の現状と課題からみた教育的配慮に関する一考察 纐纈祐子,中島美香,大槻優子
報告 在宅看護論実習におけるオンラインによるLive実習の試み
-訪問看護についての学びの分析-
福田久子,峯小百合,纐纈祐子,大槻優子
学会記事 日本医学看護学教育学会会則
日本医学看護学教育学会誌投稿規程

病院における認知症高齢者の転倒予防のための看護ケア項目のデルファイ法による同定 Identification of Items of Nursing Care for Fall Prevention for Elderly People with Dementia

古賀美紀1,津本優子1,宮本まゆみ1,小林幸恵2,坂根可奈子1,玉川優芽3,森脇早紀1,内田宏美4
Miki Koga1,Yuko Tsumoto1,Mayumi Miyamoto1,Yukie Kobayashi2,Kanako Sakane1,Yume Tamagawa3,Saki Moriwaki1,Hiromi Uchida4
1島根大学医学部基礎看護学講座,2西九州大学看護学部,3たまがわ内科クリニック,4天理医療大学医療学部
1 Dept.of Fundamental Nursing,Faculty of Medicine,Shimane University,2 Nishikyusyu University,3 Tamagawa Clinic,4 Tenri Health Care University

概要(Abstract)

 本研究の目的は病院における認知症高齢者の転倒予防のための系統的観察から対応,評価に至る看護ケア項目を特定し,臨床における転倒予防ケアの向上につながる示唆を得ることである。研究デザインはデルファイ法を用いた量的記述的研究とした。全国の老人看護専門看護師及び認知症看護認定看護師960名中281名を対象に,郵送にて質問紙調査を2回行った。各項目のコンセンサス基準は,先行研究を参考に実施度の平均値を4.0以上,重要だと判断した者の割合を80%以上と設定した。129項目中121項目の同意となった。認知症高齢者に対する転倒予防ケア項目としては,「生活状況を査定し整える」「移動によるリスクを査定し整える」「認知機能の程度を査定しケアする」「原疾患やフレイルを査定し緩和を図る」「患者の視点で入院環境を査定し整える」「患者の情報を共有し一丸となってケアする」「患者の尊厳を擁護する」に大別された。センサーマットや身体拘束に関する項目などが適合除外となった。本研究によって抽出された認知症高齢者の転倒予防ケア項目は,認知症高齢者の認知機能や移動能力の査定だけにとどまらず,認知症高齢者の意思や生活状況にも焦点を当てることで,認知症高齢者の尊厳を維持しながら安心して入院加療するための看護実践につなげることができると考える。

キーワード(Keywords)

認知症高齢者,転倒予防ケア,デルファイ法
elderly with dementia,nursing care of fall prevention,delphi study

消極的職業選択動機で入学した看護系大学生の職業決定プロセス Nursing College Students’ Career Decision-making Process after Enrollment Based on a Passive Career Choice

牛塲かおり1,2,林智子3,井村香積3
Kaori Ushiba1,2,Hayashi Tomoko3,Kazumi Imura3
1鈴鹿医療科学大学看護学部,2三重大学大学院医学系研究科看護学専攻博士後期課程,3三重大学大学院医学系研究科看護学専攻
1 Suzuka University of Medical Science School of Nursing,2 Mie University Graduate School of Medicine Postdoctoral Program in Nursing,3 Mie University Graduate School of Medicine

概要(Abstract)

目的:消極的職業選択動機で入学した看護系大学生が,入学後に生じた心の揺らぎに向き合いながら職業決定していったプロセスを明らかにすることである。

方法:看護系大学4年生15 名を対象に半構造化インタビューを実施した。分析は修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。

結果:消極的看護学生は,初期段階の≪将来の職業に対する受動的な意思決定≫から,中核段階の≪現実の看護と自己を知ることによる看護師選択の揺らぎ≫を経て,最終段階の≪将来の職業を自ら検討し続ける意思決定≫へと職業決定プロセスを辿っていた。中核段階では患者,指導者,教員などの関わりのなかで<看護師になる志向の高まり>と<受け入れ難い現実から看護師になる志向の低下>,さらに<看護と自己を知り看護師への職業適性意識の高まり>と<できない自己を知り看護師への職業適性意識の低下>との間で心理的な心の揺らぎが【外的要因に一喜一憂し定まらない気持ち】として示された。そして,この揺らぎに対して<主体的に現実と向き合う>という対処から揺らぎの積極的意味を見出していた。

結論:職業決定プロセスでの揺らぎを体験している消極的看護学生に対して,主体的に向き合えるように支援することが揺らぎの積極的

キーワード(Keywords)

職業選択,看護系大学生,職業決定,揺らぎ,プロセス
career choice,nursing college students,career decision-making,insecurity,process

臨地実習で看護学生の自律的質問に影響する要因Influencing Factors on Nursing Students’ Actions for Autonomous Questions with Problem Solving Attitude through On-site Practical Training

藤川真紀1,花田妙子2
Maki Fujikawa1,Taeko Hanada2
1福岡女学院看護大学看護学部,2国際医療福祉大学大学院看護学分野
1 Fukuoka Jo Gakuin Nursing University,2 Department of Nursing, International University of Health and Welfare Graduate School

概要(Abstract)

 臨地実習で看護学生が自律的質問をすることは,患者に合ったケアを実施する看護職をめざす学習態度として必要である。学習してわからないときに助けを求める行動には,自律的援助要請と依存的援助要請がある。自律的援助要請として行う具体的行動の1つが,「自律的質問」であり,良い看護を創造していくことにおいて必須の態度である。本研究は,臨地実習で学生が患者の問題点や目標を見つけ,患者に合った個別的なケアを考え看護過程の展開を学習するときに,自律的質問に影響する要因を明らかにし考察したものである。研究方法は,質的記述的研究である。研究参加者は,看護系大学の3年生9名で,半構成的面接調査を行った。自律的質問を促す要因は【, 事前学習と患者像がつながる病状と生活の理解】と【教員や臨床指導者からアセスメントを学び承認された喜び】が抽出された。反対に,し難い要因は【, 調べる方法やケアの理由がわからない】,【臨床指導者が忙しいと聞きにくい雰囲気を感じる】であった。事前学習と患者像が結びつくヒントや,患者の病状と退院後の生活がつながる指摘をもとに考えるときに,自律的質問が促されていた。また,学生は話しやすい教員や臨床指導者のケアに導くアドバイスやアセスメントを学ぶときに,自律的質問が促されていた。

キーワード(Keywords)

自律的質問,臨地実習,看護学生,看護過程展開
autonomous questions,clinical nursing practice,nursing student,developmentof the nursing process

手術室看護師が実践している創傷予防ケアWound prevention care practices by operating room nurses

古川智恵
Chie Furukawa
姫路大学
Himeji University

概要(Abstract)

 本研究の目的は,手術室看護師が実践している創傷予防ケアを明らかにすることである。手術室看護師15 名に半構造化面接を行い,質的帰納的に分析した。分析の結果,【術前のリスク評価を徹底する】,【手術の進行を見極めながら速やかに対応する】,術者への声掛けのタイミングをはかる】,【ケアの知識・技術力を高める】,【患者への影響を考えてケアを実践する】の5カテゴリーが生成された。手術室看護師が実践している創傷予防ケアは,【術前のリスク評価を徹底する】ことから始まっており,手術中は【術者への声掛けのタイミングをはかる】流れを予測し,【手術の進行を見極めながら速やかに対応する】実践を行っている。また,これらの実践には【患者への影響を考えてケアを実践する】ことを基盤として,常に【ケアの知識・技術力を高める】ことでよりよい創傷予防ケアを実践していることが示唆された。

キーワード(Keywords)

創傷,予防ケア,手術室看護師
Wound,Prevention Care,Operating Room Nurse

看護系大学に所属する若手教員の看護大学教員能力の関連要因A Study on Related Factors of Nursing Faculty Competencies for Junior Faculty Belonging to a University Nursing Program

土肥美子1,細田泰子2
Yoshiko Doi1,Yasuko Hosoda2
1大阪医科薬科大学看護学部,2大阪公立大学大学院看護学研究科
1 Faculty of Nursing, Osaka Medical and Pharmaceutical University,2 Graduate School of Nursing, Osaka Metropolitan University

概要(Abstract)

 本研究の目的は,看護系大学に所属する若手教員の看護大学教員能力の関連要因を明らかにすることである。研究の承諾が得られた若手教員162 名を対象に,Nursing Faculty Competencies Self-Assessment Scale,メンタリング尺度,成人用メタ認知尺度,一般性セルフ・エフェカシ尺度,個人背景を問う質問紙調査を実施した。分析は,文献的考察をもとにメンタリング,メタ認知,年齢,大学教員経験年数が看護大学教員能力に影響を与え,さらに自己効力感に影響するという仮説モデルを考案し共分散構造分析を行った。分析の結果,メンタリング,メタ認知,大学教員経験年数から看護大学教員能力へのパス係数,看護大学教員能力から自己効力感へのパス係数は有意であったが,年齢から看護大学教員能力へのパス係数が有意でなかった。そこで,修正指数を参考に年齢から看護大学教員能力へのパスを削除し再分析を行った結果,メンタリング,メタ認知,大学教員経験年数から看護大学教員能力へのパス係数および看護大学教員能力から自己効力感へのパス係数は有意を示した。モデルの適合度指標は許容範囲内にあり,メンタリング,メタ認知,大学教員経験年数が,若手教員の看護大学教員能力を高め,さらに,自己効力感の向上につながる可能性が示唆された。これらの結果は,若手教員のFD(Faculty Development)活動を効果的に実践するための情報提供になり得るものと考える。

キーワード(Keywords)

若手教員,看護大学教員能力,関連要因,共分散構造分析
junior faculty,nursing faculty competencies,related factors,covariance structure analysis

オンライン授業を受けた看護系大学1年生の現状と課題からみた教育的配慮に関する一考察A Study of Educational Considerations from the Current Situation and Issues of First-Year Nursing College Students Who Take Online Classes

纐纈祐子,中島美香,大槻優子
Yuko Kouketsu,Mika Nakajima,Yuko Ootsuki
つくば国際大学医療保健学部看護学科
Tsukuba International University

概要(Abstract)

 本研究は,オンライン授業を受けた大学1年生の意見からオンライン授業の現状と課題を明らかにし,授業を受ける学生に対する教育的配慮について検討することを目的とした。対象は,令和3年度看護学科に在籍する1年生7名とし,フォーカス・グループ・ディスカッション(Focus Group Discussion 以下FGD と略)を行った。その結果,オンライン授業の現状として,24 のコード,8のサブカテゴリー,4のカテゴリー【過去の経験による適応力】【通信機器の実用性】【学習環境の利便性】【迅速な教員の対応力】,オンライン授業を実施する上での課題として35 のコード,9のサブカテゴリー,3のカテゴリー【導入時の授業参加への戸惑い】【授業に対する負荷の増大】【環境に伴う学習への影響】が生成された。学生は,オンライン授業に対し通信機器を利用することによる実用性や学習環境の利便性など肯定的に捉えられていた一方で,学生個々のパソコンスキルの違いによる戸惑いや,通信環境の不安定さ,オンライン授業を受けるにあたっての設備環境準備の難しさ,教員や学生間とのコミュニケーション不足などの課題がみられた。これらの結果からオンライン授業を受ける学生に対する教育的配慮として,1.パソコンの操作の仕方や課題の提出の仕方など学生が自宅で動画を見ながら実践できるような教材作成,2.入学準備期間からのアプローチ,3.教員のオンライン授業に対する方向性の統一化やスキルアップ,4.奨学金などの経済的支援や通信機器の貸し出しなど学生に対する具体的な支援方法の構築,5.学生間の交流が持てるような授業内容の工夫の必要性,が示唆された。

キーワード(Keywords)

看護系大学,授業形態,オンライン授業
Nursing university,class format,online class

在宅看護論実習におけるオンラインによるLive実習の試み
-訪問看護についての学びの分析-Attempt at Online Live Practice in Home Nursing Practice
- Analysis of Learning About Home-Visit Nursing -

福田久子,峯小百合,纐纈祐子,大槻優子
Hisako Fukuda,Sayuri Mine,Yuko Kouketsu,Yuko Ootsuki
つくば国際大学
Tsukuba International University

概要(Abstract)

目的:令和2年度の在宅看護論実習は,訪問看護の実際をオンラインによるLive 中継で試みた。本研究は,訪問看護についての学びを明らかにすることである。

方法:オンラインによるLive 実習は,訪問看護ステーションを利用している在宅療養者の自宅と大学, 学生の自宅間で中継し,訪問看護師による援助の実際を見学した。その後,学生が療養者,訪問看護師にインタビューを行った。実習終了時,Live 実習についてレポートをまとめた。本研究は, 在宅看護論実習を履修した4年生を対象に研究協力を依頼し同意が得られた35 名を分析対象とした。分析は, 実習後のレポートから「Live 中継から得られた訪問看護の学び」に関する文脈を抽出し,意味内容を損なわないように要約しコード化を行った。

結果:分析の結果140 のコード,18 のサブカテゴリー,7のカテゴリー【個別性のある看護の必要性】【療養者のニーズに応じた支援】【生活環境を考慮した支援】【自己実現への関わり】【療養者との信頼関係の構築】【観察・アセスメント・技術力の重要性】【多職種連携による療養生活支援】が抽出された。

考察:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)禍においても,臨地に近い状況下で訪問看護の実際を学ばせたいとLive 実習を試みた結果,訪問看護について必要な内容の学びを深めていることが確認された。学生は,実習中の自分の行動を気にすることなく,Live 中継の療養者と訪問看護師の言動に集中できたためと考えられる。

キーワード(Keywords)

在宅看護論実習,訪問看護,オンライン実習,Live 実習,学生の学び
Home Care Nursing Practice,Home-Visit Nursing, Online Practice,Live Lab Exercise,Student Learning

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