学会誌

  • Home
  • 学会誌
  • 第23号No.2

『日本医学看護学教育学会誌』第23号No.2 (2014年10月 1日発行)

がん相談支援連携における院内ピアサポート機能の検討
Examination of the In-Hospital Peer Support Function in the Cancer Consultation Support Cooperation

大野裕美
Hiromi Ohno
豊橋創造大学保健医療学部看護学科
Department of Nursing, Faculty of Health Sciences,Toyohashi Sozo University

概要(Abstract)

本研究は、がん相談支援連携における院内ピアサポート機能を検討するために、11 ヵ所のがん診療連携拠点病院の実態調査から現状と課題を抽出することを目的とした。院内ピアサポート導入後1 年を経過した時点でのフィールドワークを実施し、フィールドワークは2 段階に分けて調査した。ピアサポーターの参加観察および聞き取り調査後、11病院への無記名自記式質問紙調査を行い、得られたデータを比較分析した。分析方法は質的帰納的解釈を用いた。結果として、院内ピアサポートの病院評価は高く、がん相談支援連携の機能として受け入れられていることが明らかになった。今後の課題は、持続可能なピアサポートシステムであり、ピアサポート活動のための財源確保、相談支援連携の整備、ピアサポーターの医療知識の習得範囲が検討事項として抽出された。

キーワード(Keywords)

がん相談支援連携、ピアサポートシステム、持続可能性
Cancer Consultation Support Cooperation,Peer Support System, Sustainability

化学療法を受けるがん患者に関わる看護師の年代別における支援
―職業的アイデンティティとストレス・コーピング、職場内のサポートの関連―
Supports for Nurses, Separated by Age, Who Take Care of Chemotherapy Patients with Cancer―Relationships between Stress Coping, Workplace Supports and Professional Identity ―

田中寛子1、鈴木幸子2、辻あさみ3
Hiroko Tanaka1、Yukiko Suzuki2、Asami Tsuji3
1海南医療センター、2和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科、3和歌山県立医科大学保健看護学部
1Kainan Medical Center、2Wakayama Medical University Graduate School of Health and Nursing Science、3Wakayama Medical University Undergraduate School of Health and Nursing Science

概要(Abstract)

看護師の職業的アイデンティティは質の高い看護を実践するために欠かせない要素であり、がん患者に関わる看護師においても職業的アイデンティティを確立することは重要である。本研究は、化学療法を受けるがん患者に関わる看護師の職業的アイデンティティとストレス・コーピングや職場内のサポートの関連を明らかにし、看護師の支援について示唆を得ることを目的とした。化学療法を受けるがん患者に関わる看護師を対象に、基本属性、看護職の職業的アイデンティティ尺度、職場用コーピング尺度、職場用ソーシャル・サポート尺度を調査した。その結果、職業的アイデンティティは年齢が高い看護師が高い値を示した。対象を20 ~ 24 歳、25 ~ 29 歳、30 歳代、40 歳代、50 歳代以上の5 群に分け、重回帰分析を行った結果、20 ~ 24 歳は職業的アイデンティティにストレス・コーピングや職場内のサポートは関連していなかった。25 ~ 29 歳、30 歳代はコーピングの「積極的行動・認知」と職場内の「先輩のサポート」、40 歳代は「役職」と「がん看護経験年数」とコーピングの「症状対処」、50 歳代以上は職場内の「先輩のサポート」が職業的アイデンティティに関連した。化学療法を受けるがん患者に関わる看護師の職業的アイデンティティに関連する要因は年齢によって異なることから、年齢の特徴を考慮した支援の重要性が示唆された。

キーワード(Keywords)

化学療法、がん患者、職業的アイデンティティ、ストレス・コーピング、サポート
Chemotherapy、Patients with Cancer、Professional Identity、Stress Coping、Support

保健師・助産師・看護師の職務満足度と思考特性や職業経験の質との関係
Relationships Between Job Satisfaction, Thinking Style, and Quality of Occupational Experience for Public Health Nurses, Midwives, and Nurses

吾郷美奈恵、三島三代子、石橋照子、梶谷みゆき
Minae Ago,Miyoko Mishima,Teruko Ishinbasi,Miyuki Kajitani
島根県立大学看護学部
The University of Shimane Faculty on Nursing

概要(Abstract)

自己の職業経験の質や参画力を高めることは看護職としてのキャリア形成につながり、個人の思考特性をコントロールすることでバーンアウトの予防になると考えられる。今回、同一県内でモニター調査に協力が得られた保健師107 名、助産師15 名、看護師130 名の職位や所属による職務満足度と思考特性や職業経験の質等との関係を明らかにし、キャリア形成するためのアプローチについて検討した。
その結果、職務満足度は経験年数、参画力、職業経験尺度の[看護職としての価値基準を確立する経験]と有意な正の相関関係にあり、効き脳による思考特性にも特徴があった。一方、助産師の職務満足度は看護師、保健師より有意に高かったが、参画力や職業経験評価尺度は職種による有意な差は認めなかった。看護職の思考特性は[感覚・友好脳]にあわせて保健師と助産師は[論理・理性脳]、看護師は「堅実・計画脳」の二重優勢で、仕事内容や職位、学歴による影響も推察された。

キーワード(Keywords)

看護職、職務満足度、思考特性、職業経験の質、参画力
nursing profession,job satisfaction,thinking style,quality of occupational experience,ability of participation in planning

終末期実習に対する看護学生の構えに関する研究
Learning Sets of Student Nurses in Anticipating Terminal Care On-site Training

渡邉千春
Chiharu Watanabe
新潟県立看護大学
Niigata College of Nursing

概要(Abstract)

本研究の目的は、看護学生が終末期実習に対して抱いている構えとその構造を明らかにすることで、終末期実習の在り方に寄与することである。
対象者は、看護専門学校の3年生で終末期実習前の学生10 名である。調査方法は、半構成面接調査法であり、死に対するイメージ、終末期医療や看護に対する捉え等、計7項目のインタビューガイドを用いて行った。
分析は質的帰納的に分析を行い、分類されたそれぞれの構えの類似と関連、差異の視点で比較分析し、構造化した。
構えを表す言葉は9つであり、構造化により、2つの大カテゴリーが抽出された。学生は、【終末期における看護で大切にしたいこと】と【終末期実習において予測される自分の姿】の対峙により、<終末期実習に対するハードルの高さ>が生じていた。また、<終末期実習に対するハードルの高さ>から、不安ややりがいである<終末期実習に対する両極性の思い>を生じていた。更に、<終末期実習に対するハードルの高さ><終末期実習に対する両極性の思い>を乗り越えようと、<他の実習と変わらない課題>と捉えたり、<安心できる教員の存在>を求めていた。
終末期実習に対する実習指導への示唆として、側にいることの意味を見出し支援する、事例を用いたコミュニケーショントレーニング、感情の表出ができる場と環境づくり、実習目標の中間評価の確認・共有、待つ姿勢を持ちつつ思考のヒントを提供する、等が挙げられた。

キーワード(Keywords)

終末期実習、看護学生、構え
terminal care,nursing students,learning set

Social Distance for Schizophrenia by Nursing Students

Shinichirou Ishii 1,2,Miwa Setoyama3
石井 慎一郎1、2、瀬戸山 美和3
1 School of Nursing, Jichi Medical University,2 Graduate School of Medical Sciences, Saga University,3 Graduate School of Medicine, Fukuoka University

概要(Abstract)

 The aim of this study was to demonstrate the social distance between nursing students and schizophrenia.Subjects were 78 nursing students. Out of these, 71 students were included in analysis from each grade.The investigation included student's age, sex, and Japanese language version of social distance scale(SDSJ). First grade subjects( n=38) were a mean age of 19.26 ± 2.66 and a mean SDSJ score of 4.82 ± 2.20(range, 1-13). Second grade subjects( n=33) were with a mean age of 19.93±1.79 and a mean SDSJ score of 4.91±2.08( range, 1-9). Overall mean SDSJ score was 4.86± 2.13. The total score of SDSJ was not significantly different in grade or sex. Questions included fiveitems.The mean scores of each SDSJ five item were compared by grade. Mean score for Q1 was 0.79±0.52 in the first grade and 0.55±0.71 in the second grade.Mean score for Q5 was 1.21 ± 0.81 in the first grade and 1.58±0.71 in the second grade. When distribution was tested for Q1 to Q5 in each grade, normality of the data was not assumed. Therefore Mann-Whitney U test was performed and the results showed that first grade students scored significantly higher than second grade students in Q1 (p<.047), whereas second grade students scored significantly higher than first grade students in Q5( p<.022). Score for Q1 was significantly higher in first grade students compared with second grade students. Score for Q5 was significantly higher in second grade students compared with first grade students.

キーワード(Keywords)

Schizophrenia, Social Distance, Nursing students

係長職にある保健師の心理的・身体的ストレス反応に関連する要因
Occupational stress responses and their related factors in middle managers of public health nurses

尾崎裕美1、2、山田和子1、森岡郁晴1
Yumi Ozaki1,2,Kazuko Yamada1,Ikuharu Morioka1
1和歌山県立医科大学大学院保健看護学研究科、2和歌山県精神保健福祉センター
1 Graduate School of Health and Nursing Science,Wakayama Medical University,2Mental Health and Welfare Center in Wakayama Prefecture

概要(Abstract)

自治体の中間管理職にある保健師を対象に職業性ストレス反応の実態とその関連要因を明らかにすることを目的とした。この研究では、中間管理職を「係長職」と定義した。A 県の全自治体に属する保健師338 人を対象に、無記名自記式質問紙調査を行った。心理的ストレス反応(以下、心理的反応)・身体的ストレス反応(以下、身体的反応)得点を測定するために職業性ストレス簡易調査票を使用した。有効回答は286 人(有効回答率:84.6%)から得られた。係長職(n=71)の心理的反応と身体的反応の得点は、有意差を認めるほどではなかったが、スタッフ、課長補佐職以上より高かった。心理的反応及び身体的反応の得点を従属変数とするステップワイズ法による重回帰分析の結果、心理的反応を強くするストレッサーとして有意な関連が認められたのは、「時間内に仕事が処理しきれない」で、弱くする修飾要因として有意な関連が認められたのは、「私の職場の雰囲気は友好的である」「家庭生活に満足だ」「情報収集を心がけている」「職場外で悩みを話す機会がある」であった。身体的反応を強くするストレッサーとして有意な関連が認められたのは、「時間内に仕事が処理しきれない」で、弱くする修飾要因として有意な関連が認められたのは、「職場外で悩みを話す機会がある」であった。

キーワード(Keywords)

中間管理職、保健師、自治体、職業性ストレス簡易調査票、重回帰分析
Middle manager, Public health nurse, Municipality, Brief job stress questionnaire, Multiple logistic regression analysis,

50 名と100 名のクラスサイズの違いによる学習効果への影響
―母子看護学領域における試み―
The impact of class size( 50 and 100 students) on learning outcomes in a maternal-child nursing course

新地裕子、椎葉美千代、奥野由美子、福澤雪子、藤好貴子、篠崎康代
Yuko Shinchi、Michiyo Shiiba、Yumiko Okuno、Yukiko Fukuzawa、Takako Fujiyosi、Yasuyo Shinozaki
福岡女学院看護大学
Fukuoka Jogakuin Nursing College

概要(Abstract)

〔目的〕 本研究は、母子看護学領域における授業形態を50 名と100 名のクラスサイズの違いによる学生の反応を比較し、学生の学習効果への影響を明らかにする。

〔方法〕 対象は、A 看護大学3年生94 名。母子看護学領域の授業において、クラスサイズを変えて(50 名と100 名)その違いによる学習効果の影響について学生に質問紙調査を行った。調査結果は、統計的手法を用いて比較検討した。

〔結果及び考察〕 50 名と100 名のクラスサイズの比較では、『教師から学習者への質問時間の設定や応答』『発言しやすい環境』『授業への参画意識や集中力』『授業内容は学習者の体験やイメージとして具体的解釈できた』などで有意差があった。以上から50 名の方が100 名より、学生の意識において、教師‐ 学習者の応答性と授業への参画意識が高まることが明らかになった。更に、学習効果として、授業内容のイメージ化や具体的解釈が促進され、学生の満足度の高い授業形態となっていた。しかし、因子分析の結果、クラスサイズは、学習意欲が高まる授業形態の影響因子としては抽出されなかった。母子看護学領域を含む専門分野の看護学は、さまざまな看護現象における看護実践を学ぶ内容が中核となる。そのため、看護現象のイメージ化や解釈に優れ、参加意識が高まる授業が望まれる。クラスサイズを考慮した授業形態を取り入れることで学習効果を高めることが期待できる。

キーワード(Keywords)

母子看護学領域、クラスサイズ、授業形態、学習効果、学習意欲
Maternal-child nursing, class size, forms of classroom, learning outcomes, motivation in learning

多重課題シミュレーション研修時の看護師の割り込み業務への対処方法の分析
Analysis of the solution to the interruptive tasks at the simulation training for the nurses

豊増佳子
Keiko Toyomasu
元 総合研究大学院大学 文化科学研究科 メディア社会文化専攻
Department of Cyber Society and Culture, School of Cultural and Social Studies, The Graduate University for Advanced Studies

概要(Abstract)

 本研究の目的は、看護師の割り込み業務対処に関する学習支援方法構築の基盤研究として、ある病院で行われているシミュレーション研修時の看護師の一次業務遂行中における割り込み業務の対処方法の分析を行うことで、シナリオの新規設計時や活用時における示唆を得ることである。調査データは、新人看護師3 名と教育委員の看護師1 名を対象として、1 人につき各約5 分間のシミュレーション研修場面を4 台のビデオカメラで同時撮影して収集した。シミュレーションのシナリオと環境は、看護の実践の文脈を考慮して作成され、4 名とも同じ内容だった。分析方法は、ビデオ観察・分析支援ツールCIAO を活用し、業務の割り込みの発生時間とその対処時の言動をテキスト化した。それらを、質的データ分析用ソフトウェアMAXQDA を援用して、The Brixey Model of Interruption を参考にしながら、割り込み業務の対処方法を分類・整理した。結果、割り込み場面の対処方法について、「中断せず一次業務を続行対処」「中断して次業務に対処」「同時に対処する」に分類し、その状況の場面を数えた。対処方法は、各シミュレーション実践者で異なり、「外的な割り込みの要因」と「内的な割り込みの要因」があるため、制限時間内でのより均質な教育を構築するためには、「割り込みの数・量」に加えて「対処方法やその要因」の予測を行い、シナリオを洗練することが必要である。

キーワード(Keywords)

割り込み業務、シナリオ、シミュレーション研修、ビデオ分析
interruptive tasks, scenario, simulation training,video analysis

学会誌の一覧

第33号

第32号

第31号

第30号

第29号

第28号

第27号

第26号

第25号

第24号

第23号

第22号

第21号

第20号

第19号

第18号

第17号

第16号

第15号

第14号

第13号

第12号

第11号

第10号

第9号

第8号

第7号

第6号

第5号

第4号

第3号

第2号

第1号