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『日本医学看護学教育学会誌』第33号No.1(2024年 9月 1日発行)

領域別実習において場を移動する学習活動で看護学生が捉えた矛盾の特徴Characteristics of Contradictions Perceived by Nursing Students in Learning Activities that Shift Locations in Domain-Specific Practice

岡島規子
Noriko Okajima
藤田医科大学
Fujita Health University

概要(Abstract)

 領域別実習における学習活動において,学内から臨地,異なる病院等を移動する学生が捉えた矛盾の特徴を明らかにするとともに,領域別実習の時期による変化を明らかにした。
 8 大学32 名の看護学生に2 回の面接を行い,「これまでと違う工夫や対応が必要であった経験」等を質問した。逐語録から矛盾に関する記述を抽出し,時期別にカテゴリー化した後,矛盾のカテゴリーを構成要素である「アーティファクト」「ルール」「コミュニティ」「分業」ごとに整理し,矛盾の特徴を見いだした。アーティファクトを媒介とする学習活動の矛盾の特徴は,全期で【対象者との関係形成における矛盾】【異なる対象者への援助における矛盾】等の7 つがあった。ルールでは,全期に【ルールが異なることによる矛盾】等の3 つの特徴がみられ,中期と後期には【実習ローテーションによる矛盾】があった。コミュニティでは,全期で【学習環境が変わることで生じる矛盾】【新しい集団と関わり学習することによる矛盾】の2 つの特徴がみられた。分業では,全期で【教員や指導者によりもたらされる矛盾】等の3 つの特徴がみられ,中期と後期では【カンファレンスで生じる矛盾】があった。矛盾は時期によって変化するものもあり,学生の成長に必要な内容がみられたが,学習活動を停滞させる矛盾も存在した。このことから,学習活動に必要な矛盾か否かを査定し,学習支援を行う必要性が示された。

キーワード(Keywords)

活動理論,学習活動,矛盾,領域別実習,看護学生
activity theory, learning activity, contradictions, domain-specific training, nursing students

訪問看護ステーション管理者のコンピテンシーの構成要素Competencies Configuration of Home-Visit Nursing Station Administrator

加藤典子¹,谷口敏代¹,吾郷美奈恵¹
Noriko Kato¹, Toshiyo Taniguchi¹, Minae Ago¹
¹ 島根県立大学
¹ The University of Shimane

概要(Abstract)

 本研究の目的は,訪問看護ステーション管理者の役割を効果的に果たすための示唆を得るため,訪問看護ステーション管理者のコンピテンシーの構成要素を明らかにすることである。5 年以上の管理経験を有する訪問看護ステーション管理者10 名を対象に半構造的インタビュー調査を実施した。インタビュー調査から,得られたデータを一意味一内容の文章とし,コンピテンシーに焦点を当てた内容分析を行い,訪問看護ステーション管理者のコンピテンシーを示す内容を抽出した。そこから,類似するもの同士を集め,要約する作業を繰り返し,共通性と相違性を検証しながら,サブカテゴリにまとめ,さらに抽象度を高めカテゴリ化した。訪問看護ステーション管理者のコンピテンシーの構成要素として,【利用者と家族への支援】【地域における訪問看護の発信】【多機関・多職種との連携】【スタッフの能力開発支援】【スタッフとの連携・協働】【スタッフのメンタルヘルス支援】【管理者のリスクマネジメント】【管理者のセルフマネジメント】【経営におけるバランス感覚】【ステーション経営のビジョン】【管理者の信条】【管理後継者の育成】の12 カテゴリが明らかになった。

キーワード(Keywords)

訪問看護ステーション管理者,コンピテンシー,半構造的インタビュー
Home-Visit Nursing Station Administrator,Competencies,Semi-structured interview

急性期治療下における達人看護師が実践している「中心静脈路の意図しない抜去」を防ぐ認知的技能~Safety-Ⅱ概念に基づく分析Cognitive Skills to Prevent "Unintentional Removal of the Central Venous Line" Practiced by Master Nurses in Acute Care: An Analysis Based on the Safety-II Concept.

河邉紅美¹,岡本華枝²
Kumi Kawabe¹,Hanae Okamoto²
¹ 愛知県立大学看護学部,²京都光華女子大学看護福祉リハビリテーション学部
¹ Aichi Prefectural University School of Nursing & Health,² Kyoto Koka Women's University

概要(Abstract)

 急性期病院では,中心静脈カテーテルの意図しない抜去に遭遇するよりも,トラブルなく通常通りに治療が進むことが多い。その成功の件数を増やすことが,患者の安全確保ができると考え,急性期治療下における達人看護師における「中心静脈路の意図しない抜去」を防ぐ認知的技能の構造化を明らかにすることを研究目的とした。研究協力者である看護師経験10 年以上の4 名に半構造化面接法を行い,得られたデータを質的帰納的に分析した。「中心静脈路の意図しない抜去」を防ぐ認知的技能は,【訪室前に患者をイメージし頭を整える】【患者に合わせた訪室回数により直視での確実な確認】【患者を巻き込み患者安全を守る姿勢】【療養の場での生活を整える援助の実践】【患者の傍にいながら安心を与える見守りや声かけの実践】【抜けないCVC 固定方法を経験から見出す】【訪室毎のアセスメントによる患者情報の更新】【チーム全体での情報共有と実践による危険予知】【未熟達な仲間を先輩看護師が支援する体制作り】の9 つのカテゴリが導きだされた。達人看護師は日々の看護実践の中で,たえず患者中心に考え,自分だけでなくチーム全体で患者の安全を守る認知的技能を網羅し獲得していた。患者の一番傍にいて安全を守り続けている看護師がどのように看護実践を行っているか,行動指標の示唆を得ることができた。

キーワード(Keywords)

Safety-II ・達人看護師・認知的技能・患者安全
Safety-II・master nurses・cognitive skills・patient safety

中堅看護師のワーク・エンゲイジメントとキャリアレジリエンスとの関連Relationship Between Work Engagement in Mid-Career Nurses and Career Resilience

小原みさお¹,高橋梢子²,岡安誠子²,金城祥教³
Misao Kohara¹,Shoko Takahashi²,Masako Okayasu²,Yoshinori Kinjyo³
¹ 島根県立中央病院,² 島根県立大学大学院看護学研究科,³ 元 島根県立大学大学院看護学研究科
¹ Shimane Prefectural Central Hospital,² Postgraduate School of Nursing Science,The University of Shimane, ³Former Postgraduate School of Nursing Science,The University of Shimane

概要(Abstract)

目的:役職をもたない中堅看護師のワーク・エンゲイジメントを高めるために,キャリアレジリエンスがどのように関連しているかを明らかにする。

方法:急性期医療を担う山陰2 県9 施設549 名を対象に,無記名自記式質問紙調査を行った。質問項目は,個人特性,ワーク・エンゲイジメント,キャリアレジリエンス,「看護の仕事を楽しむ」である。ワーク・エンゲイジメントとキャリアレジリエンスおよび「看護の仕事を楽しむ」の関連をロジスティック回帰分析で検討した。

結果:ワーク・エンゲイジメントに有意に関連していたのは,年齢,キャリアレジリエンスを独立変数に投入した場合,41 歳以上,キャリアレジリエンスの「問題対応力」,「未来志向」であった。年齢,キャリアレジリエンスおよび「看護の仕事を楽しむ」を投入した場合,キャリアレジリエンスの「問題対応力」そして「看護の仕事を楽しむ」であった。

結論:問題対応力と未来志向は,役職をもたない中堅看護師のワーク・エンゲイジメントを高めることが示唆された。また,役職をもたない中堅看護師のワーク・エンゲイジメントを高めるためには,看護の仕事を楽しむことへの支援も必要であることが示唆された。

キーワード(Keywords)

中堅看護師,キャリアレジリエンス,ワーク・エンゲイジメント
Mid-career nurses,career resilience,work engagement

成人看護学急性期実習で看護学生が患者の心理社会面の情報を捉えることに関連する要因Factos related to Nursing Students’ Learning to Collect Psychosocial Information of Patients During Practical Training for Acute Adult Nursing

喜志多玲¹,花田妙子²
Rei Kishida¹,Taeko Hanada²
¹ 令和健康科学大学 看護学部,² 令和健康科学大学 大学院設置準備室
¹ Faculty of Nursing,Reiwa Helth Sciences University,²Reiwa Helth Sciences University Graduate School Establishment Preparation Office

概要(Abstract)

 成人看護学急性期実習において学生が,患者の心理社会面の情報を捉えることに関連する要因を明らかにするため,成人看護学急性期実習後の大学3 年生10 名に,半構造化面接を実施し,質的記述的方法で分析した。患者の心理社会面の情報を捉えることに関連する要因は,【患者を気遣い信頼関係を築く】【病気による気持ちの変化と退院後の生活への影響を知る】【会話から日常生活の様子を知る】であった。また,患者の不安や心配を聞けない場合や,患者や家族に対する先入観を学生が抱くなど会話が成立しない場合,【会話から患者の退院後の生活を認識できない】【知りたい情報を患者との会話から得られない】【知識不足により手術後の生活の変化を認識できない】といった要因により,心理社会面の情報を得難くしていた。臨地実習において学生は,心理面の情報を捉えるために患者が安心できるよう行動し,病気や生活の変化などに対する思いを話せる雰囲気をつくっていた。患者の不安など心理面を知ることで仕事や役割など生活の変化などの社会面に目を向けることができ,会話が増え様々な社会面の情報を得ることにつながっていた。

キーワード(Keywords)

成人看護学急性期実習,看護学生,心理社会面の情報,会話
practical training for acute adult nursing, nursing students, information for psychosocial aspects,conversation

幼児健康診査を受診した児の受診行動と母親の育児ストレス状況の関係The Relationship Between the Medical Examination Behavior of a Child Receiving an Infant Medical Checkup and the Childcare Stress Situation of Parents

村尾 奈津子¹,吾郷 美奈恵²,山下 一也²
Natsuko Murao¹,Minae Ago²,Kazuya Yamashita²
¹ 雲南市役所,² 島根県立大学
¹ Unnan City,² The University of Shimane

概要(Abstract)

 本研究は,子どもが適切に受診するための行政保健師の保健活動について検討するため,A市において幼児を養育する母親の育児ストレス状況や保健サービスと子どもの受診行動との関係を明らかにすることを目的とした。
 調査は,A市が2022 年5月から10 月の半年間に実施した1歳6か月児及び3歳児健康診査を受診する児186名の養育者に,無記名自記式アンケートを依頼した。回答率は67.7%で,母親116 名を分析対象とした。育児ストレス状況の4尺度は全て正の関係にあり,“ 育児不安” は“ 育児観”(p =.002)“ 育児ストレッサー”(p <.001)“ 育児ソーシャル・サポート”(p <.001),“ 育児ストレッサー” と“ 育児ソーシャル・サポート”(p =.002)は有意な相関を認めた。“ 育児ストレッサー” は受診回数が多い(p =.017),不要な受診があった(p =.043)者は有意に高く,“ 育児ソーシャル・サポート” は受診回数が少ない( p =.033),育児の協力者に医療や保育の資格を持つ人がいない(p =.028),子どもの健康の相談相手の種類数が少ない(p =.019)者は有意に高かった。
 これらのことから,行政保健師は地域特性を把握し,現実に添った育児観の醸成と安心できる相談相手や子育てサポートの環境を整えることで,子どもの適切な受診につながると考えられた。

キーワード(Keywords)

幼児,受診行動,育児ストレス状況,親子保健
Infant,Medical examination behavior,Childcare stress situation,Support for parents and children

新人看護師と教育担当者が捉えるOff the job training での学びの On the Job training での活用Novice Nurses’ and Educators’ Perceptions of the Application of Skills Learned from Off the job training in On the Job training

松田未来子¹,林智子²,井村香積²
Mikiko Matsuda¹,Tomoko Hayashi²,Kazumi Imura²
¹ 三重大学大学院医学系研究科看護学専攻看護教育学分野博士後期課程,² 三重大学大学院医学系研究科看護学専攻
¹ Course of Nursing, Graduate School of Medicine, Doctoral Program, Mie University,² Course of Nursing, Graduate School of Medicine, Mie University

概要(Abstract)

目的:新人看護師の看護技術に関するOn the jobtraining 場面を振り返り,新人看護師のOff thejob training での学びの活用状況を明らかにすることである。それによりOff the job training とOn the job training を連動させた指導についての示唆を得ることである。

方法:教育担当者4 名とその指導を受けた新人看護師3 名に対し半構造化面接を行い,質的記述的に分析した。

結果:教育担当者・新人看護師共にOff the jobtraining での学びを活用できた状況は学んだ手技を手順通りにそのまま実施することであり,活用できなかった状況はOff the job training で学んだことと違う手技を行うことや患者の状況に応じた対応や判断をすることであった。新人看護師はOff the job training とOn the jobtraining での方法が異なる場合には,On the jobtraining で教えられた方法が正しいと捉えていた。また,実施後の振り返りでは,教育担当者はOn the job training ですぐに使える具体的なコツといった答えを教えたりアドバイスを行ったりしていた。

結論:新人看護師と教育担当者は,共にOff the jobtraining で学んだ内容をそのまま使うことがOnthe job training での活用だと捉えていることが明らかになった。一方,Off the job training での学びを実際的な状況に適用させ変化させて使うことは活用できないことと捉えており活用するための学びについての課題が示唆された。また,新人看護師のOn the job training での学びはそのまますぐに実践に役立つコツやアドバイスが重視される傾向にあり, Off the job training とOn the job training を連動させて学びを積み重ねていくことができていない可能性が示された。

キーワード(Keywords)

新人看護師,教育担当者,Off the job training(Off-JT),On the job training(OJT),活用
novice nurses, educators, Off-the-job training (Off-JT), On-the-job training (OJT), application

看護学生の実習中適応感尺度の作成
―実習中適応感に影響する実習前要因および実習中抑うつ状態との関係―Develop a Scale of Nursing Students' Sense of Midst of Practicum Adaptation in Nursing Clinical Practicum: Relationship between Pre-Practicum Factors and Depression that Affect the Sense of Adaptation During the Practicum

龔 恵芳
Keihou KOU
関西大学大学院心理学研究科
Graduate School of Psychology, Kansai University

概要(Abstract)

 本研究の目的は,看護学臨地実習における学生の実習中適応感尺度の作成および実習中適応感の要因を検討することである。研究方法は,Web を用いたアンケート調査である。対象者は,看護基礎教育機関に在籍する学生990 名とし,分析対象者は実習中に回答した239 名,実習前と実習中の両方に回答した196 名とした。実習中適応感尺度の因子分析の結果,“ 気にしすぎる”“ 興味関心”“ 身近な人の存在”“ 状況に応じた行動” の4 因子が抽出された。尺度の信頼性・妥当性を検討し一定程度の質の担保がれ,使用可能な尺度であると判断した。学生の実習中適応感と関連要因を検討した結果,学生の実習中適応感は抑うつ状態と関係していたことから,学習面だけではなく,精神面を含め支援が学生の実習中適応感を高めると考えられる。

キーワード(Keywords)

看護学生,看護学臨地実習,実習中適応感
nursing students, nursing clinical practicum, sense of midst of practicum adaptation

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