原著 | 看護師のVDTデータ判定能力に関する年齢群別特性 | 山口晴久ほか |
---|---|---|
原著 | 看護師におけるVDT画面情報短期記憶の年齢群別認知特性 | 山口晴久ほか |
原著 | 臨床看護経験を持つ編入生の大学生活への期待 ―グループインタビュー調査から― |
矢倉紀子ほか |
原著 | 妄想患者に対する感情理解を深めるための看護シミュレーションの効果 ―ロールプレイにおける看護学生の認識を通して― |
加藤知可子 |
報告 | 地域看護臨地実習における健康教育の学習効果 | 木村裕美ほか |
報告 | 思考訓練法を応用した成人看護学実習の取り組み | 松原みゆき |
報告 | 認知症高齢者に対する家族看護の発展過程と社会的支援について ―『忘れても、しあわせ』の介護体験記録の分析結果から― |
大野沙織ほか |
報告 | 精神遅滞を伴う慢性期の精神疾患患者との信頼関係の形成に向けた援助 ―患者の食事に対する思いに着目して― |
郷原恒子ほか |
報告 | 看護場面の再構成を用いた研修2ヵ月後の看護活動の変化に関する看護師の自己評価 | 長田京子 |
報告 | 地方における看護職者のキャリア開発について ―島根県糖尿病療養指導士の認定を受けた看護職者の調査から― |
鈴木真貴子ほか |
若齢看護師と中齢看護師の情報処理作業におけるパフォーマンスとヒューマンエラーに関する基礎的研究として、VDT作業における情報データの判定能力について、性格を考慮しながら両者の特性を比較分析した。二数字の和の偶数奇数判定をディスプレイ画面上で行わせるVDT情報判定作業を若齢看護師と中齢看護師に実施し作業成績と性格検査の結果を比較した。性格検査はL(虚偽発見)尺度を含む3尺度の評価ができるモーズレイ性格検査(MPI)を用いて分析した。その結果、以下のような結果が得られた。(1)反応時間については若齢看護師のほうが速いが、正答率に関しては中齢看護師のほうが高い。(2)中齢看護師ではL 尺度得点が高くなる傾向があり、誤修正率と高い相関がみられた。(3)中齢看護師ではL尺度得点と誤ポイントとの間に高い相関がみられた。
VDT作業、データ判定能力、若齢看護師、中齢看護師、モーズレイ性格検査
医療VDT作業用ユーザインタフェース設計のための基礎研究として、看護師のVDT画面情報の短期記憶保持による記憶の特性とその心理負担に与える年齢の影響を、被験者への視読実験によって分析した。バイタルサインデータの短期記憶によるデータ判定実験と、VDT画面に提示した数値の短期記憶においてその記憶数(チャンク)を変化させ、短期記憶保持量に対応した作業成績と心理負担の相関関係を解析する実験を行った。そして、それらの課題に対する若齢看護師と中齢看護師の、作業心理的特性の違いを比較した。短期記憶保持量と心理負担との関係については、適当な提示量の場合、心理負担が少なく、作業成績も良好であった。また、確実な短期記憶再生を期待できるのは5 チャンクまでであり、5チャンクを超えると確実な再生が期待できないばかりでなく、心理的・精神的負担が高まることを示した。また5チャンク以下でも負担は均一ではなく、チャンク数の増加とともに負担が高まることなどの認知の法則性を明らかにした。
看護師、年齢、VDT 作業、短期記憶、情報認知
研究目的は、臨床経験を持つ編入生の大学生活への期待を明らかにし、充実した大学生活を送るための学生と大学双方の有り様を検討することである。そのために臨床経験の影響に注目し、生き方を含めた本音に近い編入学要因を調査した。5 名の学生に対して、①編入学の動機、②編入学を後押ししたもの、③大学生活への期待、についてグループインタビュー法を用いてインタビューを実施し、ビデオで記録したものを逐語録にし、内容分析法、記述分析法を用いて分析した。その結果、対象者は元来知的好奇心が強く、学校で学んだ看護とのギャップや自己の無力さを、臨床で実感するなかで学問的探究心を高めていた。それを編入学へ後押ししたのは、現場の看護スタッフや友人というモデルとの出会いや家族の支援、退職や私生活でのタイミングであった。大学生活への期待は「自己の学習目標の達成」であり、看護実践に関することと人間として成長することが含まれていた。その目標達成のために、自主的に学習に臨むことや、臨床経験の振り返りや活用を支援される機会に加え、様々な学友や教官との交流を期待していた。それに応えるために大学側の支援体制の整備を図る必要性が示唆された。
臨床経験、編入生、グループインタビュー
clinical nursing experience, admission students, group interview
本研究は、A短期大学看護学科3回生60名を対象とし、精神看護学でのロールプレイと直後のカンファレンスによって、被毒妄想の症状をもつ精神障害者への感情理解を深める過程を明らかにすることを目的とした。 分析は自由記述式質問紙を用い、これらの発言内容をカテゴリー化した。その結果、1。学生が看護師役を演じた時、食事を摂取できない患者の訴えに対し、食事を勧める「推奨」や「説得」などの直接的な援助を行う傾向にあった。2。学生が患者役を演じた時、空腹であるのに食事を摂取できない苛立ちやつらさを認識できた。3。学生が患者役を演じた時、看護師に妄想を否定され、苦しみをわかってもらえないと認識できた。4。学生が患者役を演じた時、看護師に不信感をもちやすいことが認識できた。また、ロールプレイの実施後にカンファレンスを行うことで、被毒妄想という症状への対応と患者の感情の理解という看護の視点を学習していることが明らかとなった。以上により看護学生が被毒妄想患者に対するロールプレイを通して、患者の感情の理解が深められていることが示唆された。
妄想、精神看護学、ロールプレイ、看護学生
delusion, psychiatric nursing, role-playing, Nursing Students
地域看護活動としての健康づくり支援を学ぶことを目標とし地域看護臨地実習において健康教育を実施させた。その学習効果を明かにするために、佐賀大学医学部看護学科4年次学生67名に、健康教育の実施状況、受講者の概要やテーマ、地域看護活動における健康教育の必要性や目的、臨地実習としての企画実施の意義、理解度、学びについて自記式質問紙を用いて教育評価を行った。学生が実施した健康教育の受講者は、20歳代から90歳代であり、その8割以上が健診や趣味サークル活動の場で受講していた。健康教育のテーマは転倒・介護予防、骨粗しょう症や貧血、生活習慣病の健康問題であり、集団の年齢や性別などの特性を考慮して決定していた。健康教育の目的は、受講者にとって知識や情報を収集する場であり、行動変容の動機付けとなりセルフケア能力の向上の手がかりとなると理解していた。健康教育実践の意義を学生の9割が看護職として今後に生かせる、保健活動を主体的に展開することで責任感を感じる、地域を知る手がかりとなると理解していた。
健康教育、地域看護臨地実習、学習効果、看護学生
health education, community nursing practice, learning effects, nursing students
看護教育における看護技術教育はいかにあるべきか、これは今日の看護教育における大きな課題といえよう。本学の成人看護学においては、平成14 年度より佐々木が提言している、reflective thinking(以下、反省的思考とする)を、看護ケアにおける学生の思考作用に応用している。反省的思考とは、自らの経験を振り返り、一つ一つの問題を綿密に考えて、経験し分析する思考訓練法と定義する。ここでは、学生が実習で経験した看護技術を学内で振り返り、グループ毎に受け持ち患者に立案した看護過程に沿い、その看護技術を実演・発表する一連の過程をいう。今回、成人看護学実習に反省的思考を取り入れた、2年間の取り組みに対して、学生側からの評価を得ることを目的に調査を行った。調査方法は、独自に作成した質問紙と学生レポートの分析である。その結果、学生はこの学習方法が今後の看護活動に役立つと考え、教員に講義と看護技術と関連付ける学習方法の工夫と改善や、学生が発表する上での配慮を求めていることがわかった。
反省的思考、振り返り学習、成人看護学実習
reflective thinking, reflective learning, nursing practice
認知症高齢者への家族看護は7段階からなる一連の発展過程をたどっており、また「介護者と被介護者との相互性」(以後、相互性と略記)が高いほど、介護者役割過重は低くなり、「相互性」と「介護者としての準備状況」(以後、準備状況と略記)が高ければ高いほど、介護を通じて得られる報酬も高いことが先行研究で明らかにされた。そこで、認知症の義母を介護した小菅もと子氏(以後、M氏と略記)の介護体験記録を対象に、7段階の発展過程にそって「相互性」と「準備状況」の面から社会的支援について分析し、今後の家族看護への支援に生かしたいと考えた。その結果、第1、第4段階での家族や親族による支援は、M 氏の「準備状況」を促進してM氏の内省的思考に繋がり、第5段階では「相互性」を促進して義母との関係性への気づきに繋がっていた。第1~6段階での認知症ケアの専門家による支援は、M氏の「準備状況」と「相互性」を促進し、第5段階での家族会の交流は「準備状況」を促進し、ノンバーバルコミュニケーションの再発見に繋がっていた。第6~7段階では、大学、市民講座、絵画教室と絵画の公募展、デイサービス、ホームヘルパー、有償ボランティア、地域ボランティア、近所の人々などの社会資源による支援が、M氏の「準備状況」と「相互性」を促進し、義母の認知症に障害されない側面を見出すことと、義母への情緒的・配慮的看護に繋がっていた。
認知症高齢者、家族看護、発展過程、社会的支援
Elderly with dementia, Family nursing, Development process, Social support
精神遅滞を伴う慢性期の精神疾患患者は、看護師に対して依存的な態度をみせる一方で、悲観的で拒否的な面があり、看護師は患者との信頼関係を形成するのに苦慮することが多い。
本研究は、精神遅滞を伴い、拒食傾向がある患者を対象に、食事の問題解決に向け、具体的な援助を行い、患者との信頼関係が形成される過程を検討することを目的とした事例研究である。
患者は悲観的で反抗的なため、コミュニケーションを図ることが困難であり、まずは受け持ち看護師が、患者との交換日記を行うことを提案し、同意を得て、実施した。日記には、食事に関する苦悩が表現されていた。そこで、患者の唾液分泌を促すことを目的に嚥下体操を取り入れた。看護師がモデルとなり、嚥下体操にともに取り組む姿勢を示した。さらに、患者の意欲向上を目的に"がんばり表"を取り入れ、患者の行動変化に肯定的フィードバックを与え、共有した。毎食前には患者にレモン水で含嗽するように促した。
その結果、患者は食事に対して意欲的になり、自ら看護師に話しかけるとともに、悲観的な訴えや反抗的な態度は減少した。患者との関わりを通して、患者の日常生活上の悩みについて一緒に積極的に取り組むことは患者との信頼関係を形成し、患者が生活全般の自信を回復する上で有用な介入の1 つといえることが明らかになった。
精神遅滞、摂食障害、信頼関係、嚥下体操
Mental Retardation, Eating Problem, Reciprocal Trust, Swallowing Exercise
本研究は、看護師に行われた看護場面の再構成を活用した研修が、その後の看護活動にどのように反映されているかを明らかにして教育の評価を行うことを目的とした。研修2ヵ月後に参加者に研修前後の看護活動の変化について尋ね、自由記述された内容の類似性・相違性を検討しカテゴリー化した。分析の結果、30コード、9サブカテゴリーが抽出され、これらは3つのカテゴリー【自己理解の深まり】【患者とのコミュニケーションの進展】【看護師間のサポートの増加】に分類された。さらにコアカテゴリーとして『対人関係能力の向上』が導き出された。これらの結果より研修後の看護活動の変化の具体的な内容が明らかにされ、看護師の認識面と行動面及びサポートの側面から教育的支援をしていくことが重要であると考えられた。
看護場面の再構成、看護研修、教育評価
reconstruction of nursing practice, training of nurses, nursing evaluation