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『日本医学看護学教育学会誌』第25号No.1 (2016年4月 1日発行)

看護系大学教員が行う臨地実習における学生のメタ認知を促進する支援に影響する要因の検討
Factors Influencing Support to Promote Nursing Students' Metacognition in Clinical Practicums by Nursing Faculty Members

土肥美子 1、細田泰子 2、片山由加里 3
Yoshiko Doi 1,Yasuko Hosoda 2,Yukari Katayama 3
1 大阪医科大学看護学部看護学科、2 大阪府立大学地域保健学域看護学類、3 同志社女子大学看護学部
1 Department of Nursing, Faculty of Health Science, Kyoto Koka Women's University, 2 School of Nursing, College of Health and Human Sciences, Osaka Prefecture University, 3 Department of Nursing, Doshisha Women's College of Liberal Arts

概要(Abstract)

本研究の目的は、看護系大学教員が行う臨地実習における学生のメタ認知を促進する支援に影響する要因を検討することである。看護系大学教員216名を対象に、郵送法による質問紙調査を実施した。看護系大学教員の経験と臨床学習環境が学生のメタ認知の促進への支援に及ぼす影響の検討は、共分散構造分析を行った。メタ認知を促進する支援の構成要素の検討では、メタ認知概念に照らして「メタ認知的知識の促進への支援」「メタ認知的活動の促進への支援」を仮定し確認的因子分析を行った結果、適合度指標は高く、因子間の相関は有意であったことより、学生のメタ認知を促進する支援はこれら2因子から構成されていることが確認された。看護系大学教員の経験が学生のメタ認知を促進する支援に及ぼす影響では、適合度指標は高いものの、各経験から2因子へのパス係数は有意ではなく、これらの2因子には教員の経験が必ずしも寄与しないことが示された。また、臨床学習環境が学生のメタ認知を促進する支援に及ぼす影響では、適合度指標は高く、「臨床学習環境」から「メタ認知的知識の促進への支援」へのパス係数および「メタ認知的知識の促進への支援」から「メタ認知的活動の促進への支援」へのパス係数は有意を示し、臨床学習環境の充実が学生のメタ認知を促進する支援につながることが示唆された。

This study examined factors influencing support to promote nursing students' metacognition in clinical practicums by nursing faculty members. A questionnaire was sent by mail to 216 university nursing faculty members. Covariance structure analysis was performed to investigate the influence of the nursing faculty members' experiences and the clinical learning environment on the support that promotes nursing students' metacognition in clinical practicums. Confirmatory factor analysis was performed to analyze the structural components of the support that promotes metacognition; it was hypothesized that "support to promote metacognitive knowledge" and "support to promote metacognitive activities" were part of the metacognition concept. A high goodness-of-fit index and a significant correlation between factors confirmed that the support that promotes nursing students' metacognition was composed of these two factors. Regarding the nursing faculty members' experiences, although the goodness-of-fit index was high, path coefficients from each experience to the two factors were not significant, suggesting that the faculty members' experiences did not necessarily contribute to these two factors. With regard to the influence of the clinical learning environment, the goodness-of-fit index was high, and path coefficients from "clinical learning environment" to "support to promote metacognitive knowledge" and from "support to promote metacognitive knowledge" to "support to promote metacognitive activities" were significant, suggesting that enhancing the clinical learning environment leads to support that promotes nursing students' metacognition.

キーワード(Keywords)

看護系大学教員、学生、メタ認知、臨床学習環境
nursing faculty members, undergraduate nursing students, metacognition, clinical learning environment

看護基礎教育学習者のリフレクションに関する文献レビュー
Effectiveness of reflection education program for nursing students on patient care: literature review

日下菜摘 1、池田智子 2
Natsumi Kusaka 1, Tomoko Ikeda 2
1 国立病院機構浜田医療センター、2 鳥取大学医学部保健学科
1 National Hospital Organization Hamada Medical Center, 2 Tottori University Faculty of Medicine, School of Health Science

概要(Abstract)

本研究は、文献レビューを通して、看護基礎教育における自己理解を促進するリフレクションの方法及び過程とその効果を整理し、看護基礎教育における看護観を育成するための教育的示唆を得ることを目的とした。そこで、医中誌WEBを用いて、「看護学生」「リフレクション」をキーワードに検索を行い、看護学生の臨地実習におけるリフレクションを検討している質的研究の文献4件を分析した。看護学生の臨地実習におけるリフレクションの方法には、リフレクティブ・ジャーナル(RJ)、ピアグループ、ファシリテーター、ナラティブ・アプローチが使われており、自己理解、自己の課題発見、看護に対する意味づけ、自己肯定感の向上などの効果が得られていた。看護基礎教育において臨地実習を通したリフレクションは、自らの体験を表出しやすいピアグループ、ナラティブ・アプローチなどの方法により、自己の行動の特性、傾向、患者への関わりの特性の理解の促進など幅広い効果が期待されることが示唆された。

キーワード(Keywords)

看護基礎教育、看護観、リフレクション、自己理解

看護学実習における学生のレジリエンスについての概念分析
Concept Analysis of the student's Resilience in clinical practice

隅田千絵
Chie Sumida
大阪府立大学地域保健学域看護学類
Osaka Prefecture University, College of Health and Human Sciences, School of Nursing

概要(Abstract)

本研究の目的は、看護学実習における学生のレジリエンスについて概念を分析し、概念構造を明確化する事である。Walker & Avant の概念分析の手法に基づいた結果、属性として、「実習で生じるストレスから回復する力」、「学生が潜在的に持っている強み」、の2つが導き出された。先行要件には、「看護学実習でのストレスフルな出来事」が挙げられ、帰結として、「適応的な行動をとる」ことが明らかとなった。また、併せて属性及び先行要件を含んだモデル例と境界例、相反例について示した。臨地実習では、看護師や患者、その家族など他者との関わり合いが密にあり、その中で習得した技術を個別性に応じて変更させながらケアを提供するという、柔軟さが求められ、精神的緊張の高くなる場面が多い。そのような状況において、学生は心理的にストレスフルな状況が生じやすいと考えられる。しかし、多くの学生はそのようなストレスフルな状況を乗り越え、実習を行っている。このように、看護学実習でストレスフルな出来事が生じたときに発揮されるレジリエンスの概念を明らかにし、活用することは、教員や指導担当看護師が、学生の実習環境を理解することや、どのようなレジリエンスが機能しているのかを把握できることへとつながり、個別性に対応した、学生の学習活動を効果的に支援できる関わりを行うことが出来るようになるものと考えられる。

キーワード(Keywords)

レジリエンス、看護学生、看護学実習
resilience, nursing students, clinical practice

学士課程の学生がわかりやすく学べる分娩介助技術視聴覚教材の開発
―標準予防策を踏まえて―
Development of easy to use and effective audiovisual training materials on delivery assistance techniques for baccalaureate midwifery students: based on standard precautions

田中和子、浦山晶美、青木美紀
Kazuko Tanaka, Akimi Urayama, Miki Aoki
山口県立大学看護栄養学部看護学科
Yamaguchi Prefectural University Faculty of Nursing and Nutrition

概要(Abstract)

本研究の目的は、過密スケジュールで学ぶ看護師免許を持たない学士課程の助産学生にとって、わかりやすく効果的に学習できる分娩介助技術視聴覚教材を開発することである。
分娩を取り扱う助産師は、血液や体液に曝露されるリスクが高く、分娩介助にあたる助産学生も、感染のリスクを理解した上で標準予防策を実施できるようにする必要がある。そのため、まずA大学の助産師履修課程の演習で使用する分娩介助手順を感染管理の視点を中心に改正を行い、映像教材の作成を行った。学生3名を対象に半構造的面接調査を実施し、学生がわかりにくかった内容を中心に質的帰納的に分析した。学生は、はじめて経験する児の娩出介助などの助産技術だけでなく、【個人防護用具着脱の難しさ】も感じており、【無菌操作の再確認】の必要性があった。そのため児の娩出介助に関わる手技だけでなく、無菌操作などの基本的看護技術も、拡大画像や静止画を使用し、映像の繰り返しや速度調整を行い編集し直した。さらにキャプションだけでなく、根拠や目的などがわかるようナレーションも加えてわかりやすくする工夫をし、視聴覚教材を作成した。その教材を同じ学生に視聴してもらい、改正の効果を確認した。効果の確認された視聴覚教材をA大学のe-learningで学習できるシステムを整えた。

キーワード(Keywords)

学士課程、助産学生、分娩介助技術、e-learning、標準予防策
baccalaureate degree program, midwifery students, delivery assistance techniques, e-learning, standard precautions

新人期看護師の看護コンピテンシーの向上に寄与する中堅期看護師からの支援
Proficient nurses' support that contributes to the improvement of the nursing competency of novice nurses

隅田千絵、細田泰子
Chie Sumida, Yasuko Hosoda
大阪府立大学地域保健学域看護学類
Osaka Prefecture University, College of Health and Human Sciences, School of Nursing

概要(Abstract)

本研究は、新人期看護師の看護コンピテンシーの向上に寄与する中堅期看護師からの支援を新人期看護師と中堅期看護師のそれぞれの観点から検討した。全国の一般病床数500床以上の医療機関より無作為に抽出し、研究協力の得られた60病院に所属する看護師経験が3年未満の新人期看護師および看護師経験8~12年(看護師長を除く)の中堅期看護師を対象に自記式質問紙調査を行った。新人期看護師の看護コンピテンシーの向上に寄与する中堅期看護師からの支援に関する自由記述形式の質問に回答が得られた新人期看護師211名および中堅期看護師236名の記述を質的に分析した。その結果、新人期看護師からは【中堅の経験知に学ぶ機会】【中堅からの精神的な支え】【育てようという職場風土】【足場づくりとなる指導】が抽出され、中堅期看護師からは【自らを教材とした関わり】【良き理解者としての関わり】【新人の特徴に応じた指導】【行為の意味を問う関わり】が抽出された。また、新人期看護師が【足場づくりとなる指導】としてアドバイスや対策を考えて貰えるような受動的な支援を期待しているのに対し、中堅期看護師は【行為の意味を問う関わり】として行為の振り返りを促すような自立を目指す支援を行うことを重視していることが明らかとなった。今後、新人期看護師と中堅期看護師の看護コンピテンシーのつながりを導く教育プログラムの検討が必要である。

キーワード(Keywords)

看護コンピテンシー、中堅期看護師、新人期看護師、支援、職場適応
Nursing competency, Proficient nurse, Novice nurse, Support, Workplace adaptation

看護大学生低学年の職業的アイデンティティの推移と特性的自己効力感及び職業モデルとの関連
Correlation between the transition in occupational identity with generalized self-efficacy and role model of lower-grade nursing university students

藤本裕二 1、藤野裕子 2、松浦江美 3、楠葉洋子 3
Yuji Fujimoto 1, Yuko Fujino 2, Emi Matsuura 3, Yoko Kusuba 3
1 佐賀大学医学部看護学科、2 沖縄県立看護大学、3 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科
1 Institute of Nursing, Faculty of medicine, Saga University, 2 Okinawa Prefectural College of Nursing, 3 Nagasaki University Graduate School of Biomedical Sciences

概要(Abstract)

【目的】本研究の目的は、看護大学1・2年次の職業的アイデンティティと特性的自己効力感及び職業モデルとの関連について明らかにすることである。
【方法】4つの大学の看護学生を対象に、入学時から経年的に自己記入式質問紙調査を実施した。分析対象者は、1年次233名、2年次211名であった。調査項目は、職業的アイデンティティ、特性的自己効力感、職業モデルの有無であった。本研究はA大学倫理審査委員会の承認を得て実施した。
【結果】職業的アイデンティティ得点は、1年次151.0点、2年次142.0点で、2年次の方が有意に低かった(p<0.01)。特性的自己効力感得点は両学年間に有意差はなかった。職業モデル有群の割合は2 年次の方が有意に高かった(p<0.001)。職業的アイデンティティ得点は、1・2 年次ともに特性的自己効力感と正の相関があり(p<0.001)、職業モデル有群の方が有意に高かった(p<0.001)。
【考察】看護大学生の職業的アイデンティティは、学年進行に伴い2年次で低下した。2年次では、専門分野の学修が進んだことで看護職の現実の厳しさを知り、職業的アイデンティティの低下に影響したものと思われる。しかしながら、元来実施されている自己効力感や職業モデルを意識した教育は、1・2年次生においてもアイデンティティの程度に関連していることが確認された。看護大学生の教育支援を検討するためには大学4年間の経年的な変化を確認していく必要がある。

キーワード(Keywords)

看護大学生、職業的アイデンティティ、特性的自己効力感、職業モデル
nursing university students, occupational identity, generalized self-efficacy, role model

高等教育化時代における看護教員としての自己形成過程に関するライフストーリー研究
The life history research on self-formation process of nursing faculty in higher education period

大池美也子
Miyako Oike
九州大学大学院医学研究院保健学部門
Kyushu University

概要(Abstract)

看護系大学の増加に伴い、看護教員の質的量的不足が指摘されてきている。しかし、看護教員に求められる役割や能力は十分に検討されていない。本研究の目的は、高等教育化時代において、看護教育に取り組んできた看護教員のライフストーリーから、看護教員としての自己形成過程を明らかにし、次世代看護教員の育成に役立てていくことである。
看護系大学にて教授職を担った経験のある5 名の看護教員を対象にインタビューを行った。平均年齢は64.2歳、臨床歴と大学教育歴の各平均は7年と15.2年、インタビュー所要時間は平均123.8分であった。インタビューの逐語録をライフストーリー論に基づいて質的記述的に分析した。その結果、看護教員としての自己形成過程には、【臨床と教育の経験を蓄積し活用する】、 【自分を活用し力をつける】、【伝えるべきことをみいだし続ける】、【関係をつくり環境を変える】という4つのテーマと11のサブテーマが見出された。
看護教員としての自己形成過程は、経験を積み重ねながら教員としての能力や役割を修得していく過程であることが考えられた。【臨床と教育の経験を蓄積し活用する】というテーマは、看護教員が臨床経験を活用しながら教育の場へと繋げることであり、経験を活用する意義が確認された。また、<教員としての姿を学ぶ>というサブテーマが見出され、メンターやメンタリングを次世代看護教員の支援として検討していく必要性が示唆された。

キーワード(Keywords)

看護教員、高等教育、ライフストーリー、自己形成過程
Nursing educator, Higher education, Life story, Self-formation process

これから超音波診断装置を使用する助産師へのシミュレーションプログラムの検討
―初年度研修受講者の自己の課題―
Simulation programs for the ultrasonic waves of a debutante midwife–problem of learning in the first training

藤田小矢香、井上千晶、長島玲子、嘉藤恵、吉川憂子、濵村美和子、狩野鈴子
Sayaka Fujita, Chiaki Inoue, Reiko Nagashima, Megumi Kato, Yuko Kikkawa, Miwako Hamamura, Reiko Kano
島根県立大学
The University of Shimane

概要(Abstract)

島根県内で初めてとなるこれから妊婦健康診査で超音波診断装置を使用する助産師を対象にしたシミュレーション研修を開催した。本研究の目的は、研修を受講し、講義・演習・実践演習を通して感じた受講者の自己の課題について分析を行い、今後の研修プログラムの検討を行うことである。調査対象は2014年度超音波技術研修に参加した受講者5名である。超音波診断技術研修は全3回で、講義・演習・実践演習で構成されている。研修後受講者から提出された課題レポートの「自己の課題」について質的分析を行った。その結果36のコードと7つのサブカテゴリー、4つのカテゴリーが抽出された。自己の課題として【自己研鑽を積むこと】【対象へ配慮すること】【愛着形成につながるコミュニケーションをとること】【学ぶ環境を整えるために働きかけること】のカテゴリーが示された。受講者の超音波検査の技術や経験は、研修後も継続した実施が必要である。また、実践の場が少ない等の現実的な課題から、研修受講者のニーズや実践の機会を把握し、継続した練習の場の提供ができるよう研修プログラムの検討を続ける必要がある。

キーワード(Keywords)

助産師、妊婦健診、超音波研修、自己の課題
midwife, pregnant women medical checkup, training of ultrasonic waves, problem of learning

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