原著 | 助産学生の周産期援助に対する産婦の評価 | 佐々木くみ子ほか |
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原著 | 学内演習における疑似体験学習の効果の検討 −ストーマ造設者のケアに関する演習後の学生レポートの分析から− |
若崎淳子ほか |
原著 | 精神看護実習での保護室見学における看護学生の看護の理解の過程 | 加藤知可子ほか |
原著 | 助産師の心理的well-beingの発達に関する研究 | 石倉弥生ほか |
報告 | 家族周期と研究対象の視点から見た日本の家族看護学研究の動向 | 嶋田幸子ほか |
報告 | 日本における看護学実習に関する研究の現状 −グループを対象とする教授活動に関する文献の検討− |
水口陽子 |
報告 | 遠赤外線放出シーツ及びループの利用による療養環境への効果 | 木村幸弘ほか |
報告 | 終末期看護学実習による看護学生の終末期看護についての意識変化 | 新谷奈苗ほか |
報告 | 小グループ活動に着目した高齢者支援ネットワーク形成 | 安達友吏子ほか |
助産学生による分娩期を中心とした周産期援助について、産婦がどのように受け止めたのか、また、学生の受持ちを依頼された時の印象が学生による援助に対する産婦の受け止めにどのように影響するのかを明らかにする目的で調査を実施した。『学生援助に対する産婦の満足度』は、妊娠,分娩,産褥期を通して約8割であった。産婦が『学生に抱く感情』は<肯定的感情>と<否定的感情>の2因子で構成され、学生の受持ちを了承した時点、分娩期、産褥期と経時的に<肯定的感情>が高まり、<否定的感情>が低下していた。『学生の援助全体を通しての評価』について、約8割が「必要な支援が得られた」、「知りたいことを教えてくれた」、「自分の気持ちをわかってくれた」と回答し、約9割が「話をじっくりきいてくれた」と回答していた。『受持ちを依頼された時の印象』として、受持ち依頼を「断れなかった」と思う産婦は、思わない産婦に比較し、分娩、産褥期の満足度が低く、学生に抱く<否定的感情>が高かった。しかし、分娩期と比較すると産褥期の満足度と<肯定的感情>は高く、<否定的感情>は低かった。以上より、学生援助に対する産婦の満足度は比較的高く、学生に抱く感情は時間の経過とともに良好になり、産婦は学生の共感的姿勢を高く評価していると推察される。一方、受持依頼時に「断れなかった」と感じることは産婦の満足度や学生に抱く感情にネガティブに影響する。
助産学生、産婦、助産学実習
ストーマ造設者のケアに関する学内演習における学生の学びの実態を知ること、疑似体験学習の効果を明らかにすることを目的として、保健看護学科3年次生 67名を対象に演習後の学生レポートの内容を質的帰納的手法により分析した。その結果、学びの実態として、【専門的知識に基づくケア方法の習得】【患者の心を配慮した看護師の関わりの必要性】【実際のストーマ患者への看護の指向】【安易な疑似体験】の4コアカテゴリーが抽出された。疑似体験学習の効果として、ストーマ造設患者疑似体験では自分の身を患者の身に置き換えることで感覚的類似を体験でき患者への感情的理解につながること、看護師役疑似体験では学生に援助者としての自己をイメージさせ、臨地実習における看護場面での実際的具体的看護を構想させると共に、創意工夫を加えながら具体策を講じつつ学習することで机上の知識を実践可能な知識に変換できることが考察された。また、患者役疑似体験の教育的意味は、看護実践に不可欠な能力である情意領域を刺激し対象の"今ここの"感情に気づける力を帰せることであり、学生にはその体験により、他者の存在を認識しつつ応答的な関係を形成する力を育むことが期待できると考えられた。今後の演習展開への課題として、成人看護学演習に臨む学生の準備状態を整えるオリエンテーションの工夫、生活実態を味わえる教材の工夫とより臨場感のある演習の組立、疑似体験学習により生じた個別な疑問や課題に学生がタイムリーに取り組めるための弾力的な演習方法の検討の3点が示唆された。
疑似体験、ストーマ造設者の看護、学内演習、看護学生、看護実践能力の育成
simulation experience,nursing care for the people living with the colostoma,nursing student,nursing practice on the campus
本研究は、短期大学看護学科3回生55名を対象とし、精神看護実習での保護室見学と直後のカンファレンスによって、患者の安全と人権擁護の必要性を通して、精神障害者を理解する過程を明らかにすることを目的とした。分析はカンファレンス記録を用い、これらの発言内容を、学生の感想、学生からの質問、教員の説明、教員の発問に分け、それぞれをカテゴリー化した。その結果、 1)学生はイメージをもとに、保護室収容についての理解をするための思考過程を踏んでいる。 2)学生は、保護室の見学後にカンファレンスを行うことで、安全確保と人権擁護という看護の視点を学習している、ことが明らかとなった。以上により看護学生が保護室見学を通して、人権擁護と安全確保の理解を深めていることが示唆された。
精神看護実習、保護室、見学、理解の過程
psychiatric nursing training,isolation room,nursing students,observation,understanding of the process
助産師の生涯発達を心理的 well-being の側面から捉え、助産師の発達的変化をケアに対する価値認識、仕事充実度、生活満足度との関連から明らかにすることを目的とした。心理的 well-being とは、生涯にわたる肯定的心理機能を[自己受容][積極的な他者関係][人格的成長][人生における目的][自立性][環境制御力]の6次元により説明した概念であり、次元により発達変化に相違が見られ成人期全般にわたる人格的成長を捉えることができる。対象は、医療施設に勤務する助産師160名とし、43項目からなる心理的 well-being に関する質問、仕事充実度、生活満足度、ケアに対する価値認識、人口学的変数を調査した。心理的 well-being 得点の因子分析により助産師の生涯発達の構造を検討し各因子平均点を算出、心理的 well-being 得点と他の調査項目との関連について Kruskal-Wallis 検定を行い、多重比較を行った。ケアに対する価値認識は記述内容からカテゴリー化し、心理的 well-being 得点との関連について Kruskal-wallis 検定を行い、多重比較を行った。因子分析の結果、[自己受容][積極的な他者関係][人格的成長][自律性][環境適応力]の5因子が抽出された。年代別変化では、[人格的成長]の感覚は若いほど強く、仕事充実度が高い人は[自己受容][環境適応力]の感覚が、生活満足度が高い人は[自己受容]の感覚が強かった。
助産師の生涯発達、心理的 well-being、ケア提供者としての役割認識、仕事充実度、 生活満足度
life-development in midwives、psychological well-being、role cognition as a care giver、fulfillment one's present work、life satisfaction
日本において、「家族看護学」は今までにどのような研究がなされてきたのか、どのように捉えられてきたのか、今後の「家族看護学」の方向性を見出すことを目的として国内で発表された文献から検討した。医学中央雑誌で「家族看護」、「家族看護学」をキーワードに検索を行い、それによって得られた文献の抄録を対象に数量的動向、家族周期別と焦点を当てられている対象別に分類し考察した。
その結果、全体の文献数は近年増加傾向にあり、家族周期については、「養育期」以降の各段階において年々文献数が増加する傾向が見られ、特に2001年の文献は、ほとんどの段階において文献数が増加している。焦点を当てられている対象別の分類では、1998年以降は「家族」が各年で最も多くの割合を占めている。今後、家族看護の方向性としてすべての家族の健康問題への援助が期待されている。また医療技術の進歩、在宅療養や Quality of Life への関心の高まりなどから、家族から地域へと看護の対象を広く捉える必要があると考えられる。
家族、家族看護学、家族看護、家族周期
family,family nursing,nursing of family,family life cycle
看護学実習におけるグループに対する教授活動に関する文献に焦点を当て、教授法改善の視点からの研究の意義と課題の解明を目的とし、1988年〜2002 年の15年間の文献を「看護学実習」「実習」「実習指導」「カンファレンス」「実習 and カンファレンス」「実習 and グループ」のキーワードで検索して分類した結果、研究方法は質的研究15件、量的研究4件、質量併用研究5件であった。内容は「実習におけるカンファレンスの検討」「実習におけるグループ学習の検討」のカテゴリーに分類され、前者は「カンファレンスの教授方法の工夫」「カンファレンスの言動傾向」「カンファレンスの評価」「カンファレンス教授活動の構造・意義」「授業分析方法の検討」の5側面、後者は「グループ学習の効果」「グループ学習の構造・意義」の2側面から研究が行われていた。「カンファレンスの教授方法の工夫」「グループ学習の効果」「カンファレンスの評価」は展開方法を工夫して妥当性を検討し、「カンファレンスの言動傾向」「カンファレンス教授活動の構造・意義」「グループ学習の構造・意義」「授業分析方法の検討」は、発言・教授学習過程を分析し指導者の関わり方を検討していた。課題として、教育プログラム展開方法の工夫の研究は、学習効果の検討を継続して成果を教育場面に活用していくこと、指導者の関わり方の研究は,指導者と学生の発言内容を関連付けて分析する必要性が示唆された。
看護学実習、グループ学習、教授活動、文献
clinical practice in nursing,group study,education activity,document
遠赤外線は「生物学的に有用な光線」と言われている。遠赤外線が療養環境に及ぼす影響を測定するため、遠赤外線を放出するトルマリン利用シーツをベッドに適用して、被験者に仰臥位で休んでもらい、実験を行った。体温、血流量、心拍変動の測定を行った。腰部表面温度は、トルマリン非利用ベッドの方が、トルマリン利用ベッドよりも上昇率が高いという結果を得た。
トルマリン、遠赤外線効果、体温上昇
Tourmaline,Far-infrared radiation,Body temperature
終末期看護学講義(3年次、30時間)終了後の看護大学看護学科の3年次学生104名に対し、終末期看護学実習の前後に終末期において大切だと考えられるケアについて意識調査を行った。その結果、看護学生は「痛みがないこと」「呼吸困難に陥らないこと」等、実習現地で直接目にし、体験した項目で有意な意識変化がみられ身体的苦痛が強く印象に残ることが考えられた。反面、「大切な人にお別れを言うことができる」といった項目は重視されず、終末期において、実習現地で印象に残りにくかった事柄、直接目にはしなかったが、全人的な終末期看護を行っていく上で不可欠であるケアに対しても、重要性を伝えるような指導を行っていくことが必要であると考えられた。
終末期看護学実習、終末期看護、看護学生、意識変化
I市T地区では高齢者支援や子育て支援等、様々な地域活動が活発に行われているが、活動に参加する人が固定化傾向にあり、地域で孤立している高齢者も存在している。そこで、地域の高齢者のニーズを把握し、「高齢者に関わりつづけるネットワークシステム」について検討した。高齢者と各関係機関の代表者に聞き取り調査を行い、分析した結果、高齢者はお茶のみ仲間のような小グループと関わっていること、地区社会福祉協議会を知らないこと、各関係機関同士の連携に課題があることが明らかになった。「高齢者に関わりつづけるネットワークシステム」を構築し、定期的・継続的に高齢者を支援していくためには、以下の要件が重要と考えられた。1)近隣の高齢者同志で形成された小グループに対する働きかけが重要であり、ボランティアや学生の活用が有効である。2)小グループヘの働きかけとして福祉委員が小グループに情報伝達や要望収集を行うことにより、高齢者と地区社会福祉協議会との繋がりが密接にし、支援に結びつけることが可能となる。そのために、地区社会福祉協議会は福祉委員の役割・活動・教育について改善を図る必要がある。3)コミュニティセンターが活動の中核を担う地区社会福祉協議会とのコーディネート機能を果たす。
高齢者、地域参加、ネットワーク、小グループ、ボランティア