原著 | 精神科病棟の日常における看護師の臨床判断 | 前田由紀子 |
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原著 | 看護学生のストレス状況と性格およびコーピングとの関連 | 細名水生 |
原著 | 危機状況にある患者の家族看護カンファレンスにCNS-FACEを導入した効果 | 梶谷みゆき |
原著 | 文字サイズの違いによる若齢看護師・中齢看護師・高齢看護師のひらがな文字VDT視読特性 | 山口晴久 |
原著 | 高齢看護師のVDT画面情報短期記憶の認知特性 | 山口晴久 |
原著 | 脳血管障害による運動機能障害のある患者のトランスファーに関する看護師の臨床判断の特徴 | 林健司 |
原著 | 災害特性の異なる地域で生活する看護学生の防災意識および防災行動の相違 | 松清由美子 |
本研究の目的は、精神科看護において的確な判断を可能にするものは何であるか、日常の看護から、看護師の臨床判断が可能となる状況を明らかにすることである。研究協力が得られた精神科病院に勤務する看護師で、精神科での臨床経験が5年以上ある看護師を対象とし、非構成的個人インタビューを行った。インタビューでは、精神科病棟における患者との関わりについて印象に残っている場面やエピソードをありのままに自由に語ってもらった。得られたデータを現象学的アプローチの手法を用いて分析した。
その結果、「患者に対する日常の気づかいがある」「患者に対して共通感覚を持って関わりをする」「患者の自己が再生できるような関わりをする」「患者を世界内存在として了解し、意味的世界の共有者になる」「看護師は柔軟かつ強靭な自己が成立している」「患者の安らぎを大事にしている」の6つのテーマが抽出された。患者と共に意味的世界を生きることは気づかいを喚起し、これにより臨床判断の可能性を開くことが示唆された。
精神科看護師、臨床判断、現象学
psychiatric nurses, clinical judgment, phenomenology
看護学生のストレスが性格及びコーピングとどのように関連するかを調べ、看護師として働くに向けて学生のうちに身につけるべきストレスコーピングについて検討した。その結果、対象の看護学生は接近型の効果的なコーピングより回避型の消極的なコーピングを行う傾向にあり、効果的なコーピングを行う必要性が示唆された。また、調和性の低い人ほど、効果的なコーピングを行わない傾向にあり、人間関係にストレスを抱えていた。さらに、神経症傾向の高い人ほど、情動焦点型のコーピングを行わない傾向にあり、人間関係や今後の実習にストレスを抱えていた。一方、外向性の低い人ほど、接近型のコーピングを行わない傾向にあり、看護師になる事への意欲が持てずストレスを抱いていた。これにより、ストレスを効果的に対処するためには、自分のストレス要因や自己の性格に合わせて、どのようなコーピングを身につける必要があるか考える必要があることが示唆された。
ストレス、コーピング、性格、健康感、睡眠
stress, coping, personality, subjective health, sleep
救命救急や集中治療部門で働く看護師は、危機状況に陥った患者を目の当たりにして現実を受け止めきれず混乱する家族に出会う。看護師はそのような家族を支援する必要性を感じながらも、どう関わるべきか困惑し具体的な介入ができないまま関わりを終える体験を幾度かしている。本研究では、集中治療室における看護師の家族看護介入に対する困難感を軽減し家族と向き合うことができる方策を検討することを念頭に、看護カンファレンスに家族アセスメントツールのひとつであるCoping & Needs Scale for Family Assessment in Critical and Emergency care settings(以下CNS-FACEと略す)を導入し、その効果を看護師の意識の変化によって明らかにすることを目的とした。
CNS-FACEを用いて家族アセスメントを実施した事例は5事例であった。集中治療室入室当日と2日目にアセスメントし看護カンファレンスを行なった。5事例において「情報」「接近」「保証」のニーズが他の項目に比し高く査定され、それらのニーズに焦点をおいて看護を実践した。看護カンファレンスにCNS-FACEを導入したことにより、看護師は家族に対して介入すべき課題を焦点化でき、家族看護への意識を高めることができた。一方、CNS-FACEは看護師が家族の状況を詳細に把握することが求められるため、観察力の強化や家族のニーズを特定した後の具体的介入方法を確立していくことなど、看護師の力量をさらに高めていく必要性を確認した。
クリティカルケア、家族看護、CNS-FACE、チームカンファレンス
critical care,family nursing,CNS-FACE,team conference
病院業務における適正なVDT画面上のデータ表示のありかたに関する基礎的な研究として、VDT作業の主要部を占めるVDT画面におけるひらがな文字データ視読能力に着目し、多様な被験者(若齢看護師、中齢看護師、高齢看護師)にワープロ画面表計算ソフト画面に表示された20個の文字データを視読させる実験を行った。5種類の文字データサイズ、音読速度、誤読の有無、近見視力、PCの日常的使用の有無をパラメータとして、統計的手法を用いて年齢群別に文字データ視読能力について比較し分析した。その結果、文字データサイズが小さすぎても大きすぎても読みにくい、視角に直すと28分〜36分の大きさの文字サイズで画面に表示すればひらがなデータを読む速度を速くし誤読数を減少させることができる、高齢になるほどデータ視読の速度が遅くデータの誤読の可能性が高くなる、近見視力が高いほどまたPCを日常的に使用しているほど視読が速く正確である、などの結果が得られた。これらの結果は、数値データ視読の分析結果と似た傾向であるといえる。若齢看護師,中齢看護師,高齢看護師のVDT作業における視読認知特性が解明され、今後の看護情報教育に有用な知見を得ることができた。
若齢看護師、中齢看護師、高齢看護師、VDT、視読性
Young nurses, Middle-aged nurses, Aged nurses、Visual Display Terminal, Readability
医療VDT作業用ユーザインタフェース設計のための基礎研究として、看護師のVDT画面情報の短期記憶保持による記憶の特性とその心理負担に与える影響を、高齢看護師を対象に行い、これまでの研究で求めていた若齢看護師と中齢看護師の結果と比較した。バイタルサインデータの短期記憶によるデータ判定実験と、VDT画面に提示した数値の短期記憶においてその記憶数(チャンク)を変化させ、短期記憶保持量に対応した作業成績と心理負担の相関関係を解析する実験を行い、作業特性及び作業心理的特性の違いを比較した。短期記憶保持量と心理負担との関係については、適当な提示量の場合、心理負担が少なく、作業成績も良好であった。また、高齢看護師では確実な短期記憶再生を期待できるのは3チャンクまでであり、4チャンクを超えると確実な再生が期待できないばかりでなく、心理的・精神的負担が高まることを示した。また3チャンク以下でも負担は均一ではなく、チャンク数の増加とともに負担が高まることなどの認知の法則性を明らかにした。
高齢看護師、年齢、VDT作業、短期記憶、情報認知
Aged nurses、age、Visual Display Terminals、short term memory、information cognition
本研究は、脳血管障害による運動機能障害のある患者のトランスファーを実施する際の、看護師の臨床判断の特徴を明らかにすることを目的とした。脳神経外科病棟で勤務する看護師5名を対象とし、看護師によるトランスファー場面の臨床判断に関する記述と、それを補足するインタビューデータから、臨床判断の特徴について質的に分析した。
その結果、【患者のトランスファーに関心を寄せる】【トランスファーを越えて生活の拡大を願う】【あらゆる生活場面から患者のトランスファー能力を推測する】【原則を踏まえたケアを計画する】【患者と看護師の行動をフィードバックする】【"あえて"援助量を増やす】の6つのカテゴリーを抽出した。
これらのカテゴリーは、高次脳機能障害や言葉での反応が乏しい脳血管障害患者の看護に携わる看護師が、患者の思いや願いを大切にし、日々ベッドサイドで視野を広く取りながらトランスファーを実践していることを明らかにした。
臨床判断、トランスファー、脳血管障害、看護師
clinical judgment、transfer、cerebrovascular accident、nurse
看護基礎教育では、災害に対する基礎的知識だけではなく、防災意識を高め、いかに防災行動に結びつけられるかが重要である。そのためには、変化する災害リスクや地域における防災のあり方を、居住地域のコミュニティや特性を視野に入れ、学生が自ら考えられるような教育が必要である。本研究は、災害特性の異なる地域で生活する看護学生の防災意識および防災行動の相違と、災害特性との関連を検討することを目的とし、質問紙による調査を行った。その結果、対象とした2校の看護学生には、被災体験の学生数に差はなかったが、最も多く被災した災害に違いがみられ、地域の災害特性と関連が認められた。また、防災意識において違いが認められた項目は、災害や防災に対する関心のみであり、災害に対するリスク認識や防災に対する考えには認められなかった。災害や防災に対する関心は、学生の被災体験と居住地域への愛着の差が関与していると考えられた。防災行動では、地域の災害危険場所の確認と家族との連絡方法の確認において差がみられ、この防災行動の差は、地域の災害特性と被災体験した災害に影響されていると推測できた。
看護基礎教育における災害看護学教育では、災害直後の看護活動だけではなく、居住地域の災害特性や学生の被災体験を考慮し教育に活かすことによって、防災意識を高め、防災行動に繋げることのできる可能性が示唆された。
災害特性、看護学生、防災行動、防災意識
disaster characteristic, nursing student, disaster prevention action, disaster prevention awareness,