看護実践力に関連する看護師の感情労働を明らかにすることを目的として、実習指導看護師148名、大学生n=208名、専門学校生317名を対象に、自記式質問票のELIN尺度(片山他,2005)と看護実践力尺度(細田他,2007)を用いて調査した。それぞれの集団において、感情労働の概念を独立変数として看護実践力を従属変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)を実施し、その結果、「探索的理解」が共通して抽出されたため、さらに、「探索的理解」の10項目を独立変数として分析した。実習指導看護師では、「期待されるケアリングを提供する」「患者のための雰囲気づくりをする」「自分が相手に表している感情に注意を払う」の3項目が抽出された。大学生では、「患者のための雰囲気づくりをする」などの3項目、専門学校生では、「相手の立場に立って考える」などの4項目が抽出された。看護実践力に関連する感情労働は、適切な感情を探しながら患者への理解を示すものであり、看護師が患者に直接関わる時の感情表現であると考えられる。看護実践力と関連する感情労働は大学生と専門学校生によっても異なっており、学生は実習を通じた患者との関わりや看護師の影響を受けながら、教育システムの目的に関連して感情管理方法を身に付けていくことが考えられる。
感情労働、看護実践力、看護師、学生、実習指導
Emotional Labor、Ability of Nursing Practice、Nurses、Students、Practice Training
一般診療所における糖尿病患者に対する患者指導を明らかにする目的で、看護師3名を対象にインタビューを実施した。逐語録を作成し、分析した結果、患者指導の方法、指導上心がけていること、指導に対する考え方の3つのカテゴリーが得られた。患者指導の方法として【具体的に、できそうなことを提案する】【知識を提供する】【必要なことを確認する】【患者に応じて指導方法を変える】【努力を褒める】【食生活を振りかえる声かけをする】【患者自身に気づいてもらう】の7つのサブカテゴリーが抽出された。また、指導上心がけていることとして、【無理な指導はしない】【患者に寄り添う】【患者の背景を理解する】【研修へ参加する】の4つのサブカテゴリーが抽出された。さらに、あらためて指導を行っているというふうには感じておらず、患者に対してはアドバイスをしているというように捉えているといった【指導に関する考え】が語られた。対象者は1クリニックの看護師であったが、治療の中断にならないように配慮したり、治療の基準や薬なども変わってくるので勉強会があったら行くようにしている、など、患者指導を実践していることが明らかとなった。地域の人々にとって身近な医療機関である一般診療所における看護師による患者指導の重要性を再認識し、支援していく必要がある。
患者指導、患者教育、糖尿病患者、一般診療所、看護師
patient education , patient teaching , patients with diabetes, clinic, nurse
Objective:
To identify characteristics of and personal and environmental factors related to occupational identity of Japanese first-year nursing students.
Method:
A questionnaire survey was conducted among 193 first year nursing students from three universities in Kyusyu area. Responses from 174 students were included in the analysis. Questions included those asking about occupational identity, self-efficacy, existence of a professional role model, reasons for wanting to become nurse, experience of nursing or caring for their family members and whether prior to entering the university, they knew of anyone close to them who were working in the field of medicine. The students were explained of the purpose of the study, and that their participation, non-participation in or withdrawal from the study will not affect evaluation of their scholastic performance. Informed consent was obtained from all those who agreed to participate. The study was approved by the ethics committee of the A University.
Results:
167 of the total of 174 participants were female, and the average age was 18.8 years old. 68 answered that they had some sort of role model and 105 had experience of nursing their family members. Occupational identity score was significantly higher among those participants who had role model and/or experienced nursing their family member (p<0.01). Occupational identity was positively correlated with generalized self-efficacy (p<0.001).
Discussion:
Providing a role model may significantly contribute to helping students build occupational identity. Furthermore, it is also necessary to utilize education methods which not only simply respond to but also strengthen the generalized self-efficacy of students.
occupational identity, nursing students, role model, generalized self-efficacy
職業的アイデンティティ、看護学生、職業モデル、特性的自己効力感
本研究の目的は、急性骨髄性白血病と診断され同種造血幹細胞移植を受けた成人前期にある患者の語りを記述し、病いの経験の意味を解釈し、そのことから同種造血幹細胞移植を受ける成人前期患者への看護実践に関する示唆を得ることである。
研究方法は、患者が経験した病気の過程についてインタビュー調査を行い、語られた内容から逐語録を作成した。分析方法は、ライフヒストリー法を用いて解釈した。
その結果、病いの経験の中心的なテーマは、≪苦難からの自己成長の機会≫と解釈できた。この中心的なテーマは、3つの時期とサブテーマ<病いの存在に驚きつつ治療に挑む><苦難の連続に耐え続ける><病いの苦難を捉え直す>によって構成されていた。
同種造血幹細胞移植を受ける成人前期患者への看護実践を行ううえで、発達課題を考慮した生活の再構築の向けた支援と、患者自らが病いの意味を見出していけるような支援の必要性が示唆された。
同種造血幹細胞移植、ライフヒストリー、病いの経験、 成人前期
allogeneic hematopoietic stem cell transplantation、life history、experience of illness、early adulthood
本研究では、「初心者レベル」看護師用のICU看護基礎知識評価試験案を作成し、その内容的妥当性を明らかにした。そして、その検証に向けて、基準関連妥当性を確立するための外部基準として、試案の特性から理論的に予測された学内成績、国試評点を一応の基準とし、試案得点との関連を検討した。内容的妥当性は、ICU看護の専門家10名の協力を得て、無記名の自記式質問紙調査を行い、LynnのContent Validity Index(CVI)により検討した。外部基準は、看護師等養成所の最終学年生112名の協力を得て、連結可能匿名化調査を国試前後に行い、試案得点と学内成績、国試評点との間の相関(Pearsonの積率相関係数)により検討した。結果、内容的妥当性においては、適合項目48項目、救済項目16項目、再検討項目19項目で、問題の難易度を示す項目困難度などの項目特性を併せた検討が必要であった。学内成績と国試評点は、試案得点との間に有意な正の相関を認め、外部基準としての有用性が考えられた。
ICU看護、基礎知識、評価試験、妥当性、初心者
Intensive care unit nursing, basic knowledge, evaluation test, validity, novice
研究目的は、次世代リーダーの早期選抜教育に関する看護職トップ管理者の認識と取り組みの実態を明らかして、次世代リーダー育成に寄与することである。研究デザインは量的実態調査で、18項目からなる質問紙を作成し、無作為に抽出した500施設の看護部トップ管理者を対象に、郵送法にて実施した。有効回答率は17.0%であった。早期選抜教育の必要性は82.4%が認知しており、30代の副師長を選抜の人材として重視していた。「成長につながる経験」としてはプロジェクトタイプが重視され、ついで部署の立て直しや人事異動、初めての管理経験や業務での失敗経験であった。これらの仕事経験を通じて、次世代リーダーとして一皮むけ、管理者としての覚悟の形成が期待されていると考えられる。早期選抜教育への取り組みとしては、「意図的に仕事経験を付与」しているのは73.8%であり、「育成に必要な人の配置」に取り組んでいるのは40.2%で両者には関連が見られた。意図的な仕事経験の付与の進展は、次世代リーダー育成の支援につながるだけでなく、看護実践の場の教育環境の整備に寄与すると考えられる。
次世代リーダー、早期選抜教育、看護職トップ管理者
next-generation leaders、early select education、nurse manager
本研究は、初回エピソードで急性期統合失調症者家族の全体16名のうち、12名(75.0%)を対象として、心理的負担の軽減のために、グループ療法を用いた心理教育を実施し、抑うつ等を改善する働きかけを行うことの効果を測定した。調査は、グループ療法の実施前と実施後1か月後に、気分プロフィール日本語版を用いて行い、心理的負担の変化を検討した。分析は、Wilcoxon signed-rank testを用いて行い、その結果、抑うつは1%水準で有意な低下が認められた。初回エピソード急性期統合失調症者の家族は、グループ療法による働きかけによって、心理的負担が軽減されることが明らかになり、その効果が示唆された。
統合失調症、家族、グループ療法
schizophrenia、family、Group-psychoeducation
本研究の目的は、基礎看護技術のひとつである仰臥位から側臥位への体位変換において、看護学生および看護教員の手のふれ方の特徴を探ることである。対象者は、日常生活援助に関する看護技術を学修した看護大学の1、2年生女子11名(18~20歳)、同科目担当の女性教員3名(35~65歳)であった。方法は、2010年6月~8月、仰臥位から右側臥位へ体位変換する際の看護者の手指および手掌にかかる圧力を測定した。測定用具は圧力測定フィルムプレスケール(富士フィルム)極超低圧用LLLW(測定可能圧力範囲;0.2~0.6MPa)で、看護者役の右手に貼付し、圧力画像解析システム(FPD-9270)を用いて圧力値を得た。患者役は標準的な体格の女性1名で、ベッドは看護者役の身長の約45%高とした。分析は、平均圧力値を算出し、看護学生と看護教員で単純比較した。倫理的配慮として、久留米大学倫理委員会で承認を得て行った。結果、体位変換時の手の圧力分布から、看護学生が第2、3、4指の指先に力を入れていたのに対し、看護教員は第5指を中心に指の付け根から手掌に圧をかけていた。これにより、初学者の看護学生は、指先に力を入れて行う傾向にあり、看護教員は看護学生に比べ、患者のからだを包みこむような手のふれ方で体位変換を行っていることが推測された。
手のふれ方、圧力分布、体位変換、看護学生、看護教員
ways of touching,pressure distribution,changing patient position,nursing students,nursing teacher