中国の看護学教育は改革開放政策と経済発展に伴い、1980年以来大きく変革されつつある。多層(高、中、初等看護学教育)、多形式、(普通、夜間大学、資格試験)、多途(国家、団体、個人)に、卒前看護学教育と卒後看護学教育の教育システムを改革しつつある。現在、中国政府は、個人、各種団体および外国投資者に対して、私立看護学校を設立するよう奨励している。また、人々の健康ニーズの向上と人口の急速な老齢化に伴って、看護学教育強化による看護の質の向上、看護婦数のコントロールおよび看護婦法の整備が課題となっている。中国における看護学教育制度、養成状況、ヘルスマンパワー、卒後研修と生涯教育などの現状を検討し、課題を提起した。
中国 看護学教育 卒前教育 卒後教育
医学生が医学教育において主体性を確立し、医師と患者、さらに医学生と家庭健康管理実習における訪問家庭との相互の関係を理解することが、教育効果を高める上で重要と考え、この目的に沿ってパネルディスカッションを企画した。医学部4年生を対象に、パネルディスカッションのテーマを、「高齢化社会ちプライマリ・ヘルスケア」とし、まず討論に臨む準備段階として、医学生が高齢化社会の到来をどのように認識しておるのかを明らかにするために、自分自身の老後にとって、また両親をみる家族として、さらに将来医師になるものとしての高齢化社会の受け止め方と、その中での自分の役割は何かを考えた。医学生にとって高齢化社会は、自らの老後の問題という認識は薄かった。一方、両親の老後についての関心は高く、62%の学生が両親の面倒を見たいと答えたが、具体的に何をするのか、自分自身の役割についても認識は男女間で大きな隔たりがあった。次に高齢化社会における医師の役割として、プライマリ・ヘルスケアに関しては、70%の学生が関心を示していたが、自分の将来の進路として意識して考えている学生と、そうでない学生との間で、具体像のイメージに差が認められた。まずこの認識の違いを明らかにし、その上でパネリストを交えて「問題解決」を指向して、すなわち今回のテーマである高齢化社会を如何に迎えるのか、その中で自分はどのような役割を果たすべきかを論議することで、立場性の認識を深め、主体性の確立を促すことができた。この教育方法は、単に知識を効果的に得るためだけでなく、自らの問題として主体的に考えていく新たな動機づけにも有効であり、創造的人間関係、学習態度の形成にも役立つものと思われる。
医学教育 コミュニティ 主体性 立場性 問題解決
佐田町在宅介護支援センター(以下、支援センター)は、重度の障害や疾病を持ちながらも自宅で暮らし、死を迎えたいと願う高齢者(以下、療養者)と家族を支援してきた。自宅で死を迎えた20ケースについて、療養者と介護者の満足度を調査し、支援センターの活動評価を行った。これらのケースでは、全ての介護者が最期まで介護できたことを満足していた。介護過程においては、介護者が家族や専門家の支援により安心してケアのできたケースが、それらの支援が不十分なために不安・疲れを感じていたケースより多かった。
終末期ケアは、「最後の看取り」ではなく、療養者が生活自立している時点から最期までの時間的広がりを持ったケアである。できるだけ早い時期から療養者・家族との関わりを持ち、ケア・コーディネーターとして信頼関係を形成していくことが有効であった。また、自宅で最期を迎えようとする療養者やその介護者を支え、他の家族や地域の社会資源との結合をはかることが重要であった。支援センターは、療養者と家族のニーズを把握し、適切な社会資源を結合するケアマネージメント機能が求められている。
終末期ケア コミュニティケア ケアマネージメント 在宅介護支援センター
近年、癌告知に対する一般の関心は高く、当院でも看護上の大きな課題となっている。しかし、当院では治る見込みがない患者の場合、医療従事者の告知へのためらいと家族の不同意などからほとんど告知されていない。癌告知は、文化、社会規範そして医療システムを考慮して推進する必要があり、日本でも多くの調査研究が行われている。しかし、多くの研究は、健常者を対象に行われているため、対象者が自分の死を遠い存在と感じていることから、信憑性に欠けていると考えられる。このため、癌告知に対する患者と家族の抱える苦痛や戸惑い、告知に対する考え方そして立場による癌告知への態度違いの有無を明らかにすること、告知における看護の役割を導き出すことを目的に本研究を行った。癌患者の介護者に対して、癌告知に対する意識調査を行った。その結果、①自分が「治る見込みがない場合」の告知希望者率は、他の調査より低かった、②「治る見込みがない場合」の告知希望は「生に対する質」を求めていた、③家族の立場からは、患者の受容能力、サポートする家族の不安、負担を理由に告知には消極的であった、④介護者は、看護者に主に「共感」「サポート」「コーディネート」を求めていた。
告知 介護者 生命の質 看護の役割
家庭健康管理実習において慢性疾患をもち、健康行動の必要性を認識しているにも関わらず、行動できない事例を多く経験した。このため行動変容の要因と方策について検討することにした。島根県立中央病院に糖尿病のために教育入院した4事例を個別面接調査し、糖尿病患者の行動変容に影響する要因を明らかにした。患者自らのイニシアティブでケア資源を活用し、問題解決に向かうための健康教育の方法と支援環境について考察した。
セルフケア能力 行動変容 健康行動 支援環境
看護婦のストレスに関してアンケート調査をした。対象は一般病院で半年以上の勤務歴のある看護婦38名(23―54歳、平均年齢37.6±7.5歳)、20―35歳は16名、35歳以上は22名であり、このうち、外来勤務8名、外科系病棟勤務15名、内科系及び老人病棟勤務15名である。心理的ストレス尺度は心理的ストレス反応尺度―50項目改訂版(新名ら)を用いた。全得点と年齢とは、40歳をピークに負の二次相関を示した。総得点では20―35歳では66.3±32.3点、35歳以上では81.4±37.8点と35歳以上で得点が高かったものの両群間に有意差は認められなかった。下位項目では侵入的思考、対人不信の項目については35歳以上のほうが得点が高い傾向にあった。また、勤務別に検討したところ、総得点では外来勤務看護婦60.0±33.0点、外科系勤務看護婦72.1±32.0点、内科系及び老人病棟勤務看護婦86.1±39.5点と内科系及び老人病棟勤務看護婦が最も得点が高かったが、有意差は認められなかった。下位項目では内科系及び老人病棟勤務看護婦では他の病棟よりも意欲の項目で外来勤務看護婦よりも得点が有意に高く、対人不信の項目で外科系勤務看護婦よりも得点が有意に高かった。看護の質を充実させ、良い看護サービスを実践するためには、これらのストレスを軽減させる方向を医療関係者は真剣に考えなければならない。
看護婦 ストレス 心理的ストレス尺度 バーンアウト
私たちは、病棟で看護学生のリハビリ期実習の指導を受け持っている。実習は受持制をとり、受持患者中心の看護過程の展開が行われている。学生は、「何気なく過ごしている患者」「リハビリでは一生懸命なのに、病室では寝たままで他の患者との交流がない」という気づきをしているが、カンファレンスでは、意見が活発でなく、学生が相互の問題を共有して、思考を広げることが困難であった。今回、リハビリ期実習に、受持患者をとりまく人的環境づくりとしてレクレーション導入を試みた。単調になりがちな入院生活に刺激を与えるために、1年を通して季節感が味わえる行事を実習に取り入れた。その結果、患者からは普段見られない声がで、歌を歌い、笑顔を見せる等の生き生きとした表情の変化が見られた。学生は、老人に対しての声かけ、言葉使いの大切さを気づき、患者の行動変化から看護の実感を得た。また、学生は、患者にとって健康であった日々の生活継続が重要であることを認識した。
学生主体の教育 リハビリ期の実習 レクレーション 老人看護
著者の勤務する病棟では、慢性分裂病患者が8割を占め、その患者は合併症や機能障害を持っている。そのためか社会復帰をめざしたリハビリテーションの成果はあがりにくい。ところが、コミュニケーション障害を持ち、生活の全面介助を要した患者の劇的な回復過程は、慢性分裂病患者の社会復帰のためのケアに悩む看護婦を勇気づけてくれた。患者は、1年間の入院によって看護婦と視線を合わせ、短い会話を交わし、自分の意思で行動可能なまでに変化していった。ポジティブな行動変容の要因をペプロウの人間関係理論に基づいて、看護婦―患者関係の発展過程を考察した。看護過程を通した人間関係の成立が、患者のパーソナリティーの発達を促進することを明らかにした。
ペプロウの人間関係理論 コミュニケーション
悪性リンパ腫と告知され、化学治療を受けている患者の看護では、入院中も"その人らしく生きることができる"ために、入院前の日常生活を継続する努力とともに、充分な治療効果を期待される。そのためには、入院中および外来時のケアの質を充実させることによってQOLの向上をめざすことが重要である。本研究では悪性リンパ腫で化学治療中の患者に対し、看護者が、障害となる問題点を明らかにし、フローチャートを用いた退院指導を行った。外来通院中は、面談と電話による相談体制を作った。その結果、退院後に患者自身が副作用を評価可能になり、看護婦との相談体制によって安心感をもって職場復帰を果たすことができた。
QOL フローチャート 退院指導
排泄の援助技術の中で留置カテーテル法は、重要な看護技術の一つであり、当学院では、実習においてほぼ全学生が指導を受けている。しかし、留置カテーテル法は学生にとって高度な技術であり、精神的に緊張するために臨床実習ではうまく実施できなかった学生が多い。その原因の一つは、市販のビデオ教材が実習病院の手順と異なり、学生には修得困難な手技を含んでいたためであった。学生が容易に安全な技術を修得するために、オリジナルなビデオ教材の作製に取り組んだ。自作のビデオ教材を視聴した後、学生から「教科書よりよくわかる」「実際に役立つと思う」などプラスの評価を得、安全な技術修得に効果的であった。作製したビデオ教材は、画像の鮮明度や細かい部分の描写に課題が残るが、教育―学習過程におけるメディア選択から看護技術に対する考えや教育内容、方法について整理することができた。
ビデオ教材作製 留置カテーテル法 安全な技術 自己学習
国連「子どもの権利に関する条約」は、その基調を子どもの権利の能動性におき、子どもにおける人権の意味をとらえなおした。現在子どもをとりまく環境の急激な変化は、学校教育にいじめ、不登校、喫煙、薬物、エイズ、性教育等の問題を引き起こしている。「子どもの権利に関する条約」をふまえて、健康福祉教育の確立に向けた学校保健のカリキュラム・デザインおよび養護教諭の役割を明らかにする必要がある。学生が、養護教育実習の中でとらえた健康ニーズと学生自身の問題意識を分析し、健康福祉教育の課題を明らかにした。実習学生の問題意識や実習態度の分析から、養護教諭教育として、複雑、多様化した子供たちの訴えを受けとめられる能力育成、さらに子供の健康ニーズを多角的に分析できる実習前の動機づけの必要性が明らかになった。
学校保健 健康ニーズ 健康福祉教育 養護教諭教育