総合看護を志向した家庭訪問実習の試み ―実習の成果と課題― |
長崎雅子ほか |
妊娠から産褥にいたる継続管理実習の改善に関する研究 ―継続妊婦サイドからの評価と実習展開の改善― |
三島みどりほか |
コミュニティにおける保健・医療・福祉の総合化を志向した保健婦教育のあり方 | 今若陽子ほか |
学生主体・問題解決型Community-based educationの試み | 福島哲仁ほか |
急速な人口の高齢化および慢性疾患の増加など変動する今日の社会は、地域に目をむけ総合的視野に立つ質の高い看護を求めている。看護教育においても、対象の全人的理解に基づくケアを目指してはいるが、現在の臨床実習に主眼をおいたカリキュラムでは、対象を社会の中で生活している人間として理解することは極めて困難である。
当校では、今までの教育を評価した結果、①対象を全人的に理解することが難しい。②総合看護を実践する能力が身についていない。③看護者としての基本的態度の修得に関わる問題があがった。
そこで、1989年度より総合看護を志向した全人的、主体的教育方法として、家庭訪問実習を基礎看護教育の初期にearly exposure として位置づけた。展開方法としては、1年生を対象に家庭訪問を計画し、家庭で生活している対象との関わりを体験させ、健康阻害因子の分析、看護上の問題の明確化、問題解決にいたる体系的思考能力の育成を目的とした。さらに、本実習を2年生の臨床実習および3年生の継続看護実習に発展させ、病院と地域を包括した看護教育の体系化を追求したいと考えた。ここでは、初年度の実習を終えての成果と課題について報告する。
近年、助産婦教育の中で主体的問題解決型教育が重視されている。その中で継続管理妊婦(以下継続妊婦)を通しての一連の学習は、助産婦として必要なケアを実際に即しながら体系的に、主体的に、総合的に学ばせることができるという点で大きなウエイトを占めている。そこで、より効果的な学習条件を整えるために妊婦サイドからの評価をし、学生に受け持たれて困った点を中心に調査し、今後の実習展開の改善を試みた。
今、地域保健活動において、保健・医療・福祉の総合化は重要な課題である。われわれは、山根のいう総合保健活動の理念を大切にし、その活動の必要性と展開方法を理解し、チームの一因として保健婦、養護教諭の役割を果たせることを教育目標としている。
中でも、Community Health Approachの意義と方法論を理解させるために、フィールド実習では、地域の特性を知り、住民の健康問題の発見とその関連諸要因の分析によって保健ニーズを把握する。さらに、保健所・市町村実習、学校実習では、フィールド実習を基盤にして政策の樹立、実践に重点をおいて実習を展開し、再度、フィールド実習に返して評価のステップを踏み、一連の過程を終える。
学生は、上記の保健所・市町村実習の中で、高齢化社会における保健・医療・福祉のネットワークのあり方に疑問をもった。その疑問をさらに発展させるための有効な教育方法について検討したので報告する。
日進月歩する医学の進歩に伴い、医学生に要求される医学知識は膨大なものになりつつある。過密カリキュラム、マスプロ授業といわれる医学教育の中にあって、医学生の学習意欲の喪失、「落ちこぼれ」、そして大量留年という現象が生じ大きな教育問題となっている。
一方では、臓器別疾患別講義形式の中で、身体的、精神的、社会的健康状態を相互の関連性の中でとらえ、人間を全体としてみる視点、さらに生活の場である家庭やcommunityの中で人間の健康を考える教育が非常に不足している。このような現状に対し、予防医学の立場から、communityの中で健康問題をとらえ、それを解決して行くプロセスを学び、学生自身が主体的に講義をすすめる教育方法を試みた。そのカリキュラムデザインと初年度の評価を行ったので報告する。