原著 | 看護学生−患者関係における信頼の形成要因 | 森脇純子 |
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原著 | 卒後1年目看護師の特徴と教育的サポート | 古居須美江ほか |
原著 | 転倒防止対策におけるアセスメントシート活用と看護介入の変化 | 鶴原智恵ほか |
原著 | 看護学生の高齢者とのかかわり体験と高齢者イメージとの関連性 | 近藤ふさえほか |
原著 | 手術患者における入院前よりの継続的呼吸ケア教育の呼吸機能と対処行動への効果 | 岡田早苗ほか |
原著 | 島根県におけるターミナル期にある患者を取りまく現状 − 介護経験者実態調査における悪性新生物群とその他の疾患群の比較 − |
梶谷みゆきほか |
報告 | 対照言語学的視点からの翻訳分析 − アメリカ英語における医療語の場合 − |
田中芳文 |
報告 | Decreasing Student Anxiety During English Instruction at Vocational Colleges | Carmella LIESKE |
報告 | 精神看護実習前後における精神障害者に対する看護学生の印象の変化とその関連要因の考察 | 加藤知可子 |
報告 | 男子ジュニアスポーツ選手における生活習慣病の危険因子の検討 | 井ノ本成美ほか |
研究目的は、看護学生と受け持ち患者間における信頼の形成要因を明らかにすることである。対象は成人看護学実習Ⅱ(慢性期)で看護学生が受け持った入院患者2名である。グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて半構造的面接を行い、得られたデータを質的に分析した。その結果、信頼の形成要因として、17のコード、7つのサブカテゴリー、2つのカテゴリーが抽出された。カテゴリー【患者を尊重する態度】は、「ひたむきな学習態度」「共感」「患者への関心」「患者に寄り添う」というサブカテゴリーから構成され、カテゴリー【ニーズに合った看護】は、「患者の希望に応じた行動」「ニーズに合った知識の提供」「身体的・精神的ケア」というサブカテゴリーから構成された。これらを看護師−患者間の信頼の形成要因と比較すると、尊重・安心感・関心は共通していたが、技術・見通しという要因は抽出されなかった。技術・見通しは能力を要することであり、看護学生は無資格であることや限られた実習期間によるものと考えられる。一方、「ひたむきな学習態度」「患者に寄り添う」という態度は、学生らしさが表れたものであり、臨床実習における看護学生と患者の関係に特有な要因と考えられた。また、信頼は患者の身体的・精神的状態が良いときの方が形成され易く、時間の経過とともに徐々に形成されることが明らかになった。
看護学生−患者関係、信頼
nursing student-patient relations,confidence
平成12年度と13年度の卒後1年目看護師40名を対象に、島根県立中央病院の卒後1年目研修プログラムの一年間の成果をまとめたレポート「看護観」の自由記載から、卒後1年目看護師の看護観とその形成に関係したと思われる要因を明らかにし、どのような教育的サポートが必要かを検討した。レポートからの看護ケアの質を構成する因子の記載割合は、第1因子『患者のもつ力を生かして支える』が82%、第2因子『患者を取り巻く状況を整える』が38%、第3因子『患者を楽にする』が67%、第4因子『目的を意識して働きかける』が60%、第5因子『患者と向き合う』が23%であった。また,各レポートにおける因子数は、3因子が37%と1番多く、全5因子は5%のみであった。卒後1年目看護師の看護観として、『患者のもつ力を生かして支える』、『患者を楽にする』、『目的を意識して働きかける』といった患者との直接的な関わりに関するものは捉えやすいが、患者を取り巻く状況までは着目できていない傾向が認められた。また、看護観の形成に関係したと思われる要因については、内容分析の手法を用いて分析し、『看護活動でのつまずき体験』『看護活動での成功体験』『先輩の示す役割モデル、指摘、助言』『研修で得た知識、看護の体験』の4カテゴリにまとめることができた。
卒後1年目看護師、看護観、看護ケアの質
従来から転倒防止のために、1時間毎の訪室や、夜間は病棟センターに移動し常時観察できる環境を作る等の転倒防止対策を行っているが、適切な看護介入が行えていないために転倒が生じているのが現状である。そこで、転倒防止に対する適切な看護介入を実践していくため、アイオワ大学老年看護介入研修センターのアセスメント項目を基盤に、排泄行動に関する項目と日常生活パターンに関する項目を追加し、修正版の独自の転倒リスクアセスメントシートを作成し、アセスメント結果に基づいた看護介入を試みた。その結果、看護師は高齢者の転倒要因を理解でき、転倒防止における重視するべきアセスメントの視点を明確にすることができた。また1事例ではあるが、転倒の危険性が高いと予測した事例に対して転倒を防止することができ、転倒要因に対する個別的なケアの必要性が明らかになった。今回用いた修正版のアセスメントシートを、今後は臨床現場で活用しやすいより実践的なアセスメントシートに改良していくことが必要である。
転倒、高齢者、アセスメントシート、看護介入
fall,elderly persons,assessment sheet,nursing intervention
高齢者を取り巻く社会情勢の変化や、看護学生の高齢者への関心、祖父母との接触、個人のかかわり体験が高齢者イメージを変化させているのではないかと考える。本研究は、看護学科3年生を対象に実習前のかかわり体験の実態と実習での体験が及ぼす高齢者のイメージの変化とその要因を明らかにすること目的として、某私立大学看護学科3年生83名を対象にイメージ調査とかかわり体験の実態を調査した。対象を同居かかわり経験群、非同居かかわり体験群、非同居非かかわり体験群に分類し比較した。その結果、(1)同居高齢者と対話をする学生の割合は高いが、対話や日常生活の援助を行っていない学生もいる。一方、同居体験がなくてもボランティア.アルバイトなどをとおして高齢者とのかかわり体験が増えている。(2)実習後のイメージは、同居かかわり体験群は肯定的に変化するイメージ項目が増え、非同居かかわり体験群は肯定的と否定的に変化するイメージ項目が混在し、非同居非かかわり体験群は否定的に変化するイメージ項目が増加した。(3)外観や活動は否定的イメージであり、性格、感情、他者との関係性は肯定的イメージでとらえている。(4)高齢者看護学実習でのかかわり体験をとおして[空想的 -- 現実的]に有意差を認めた、(5)高齢者イメージの要因として[生活の安定][時間と空間][身体機能][対人関係][円熟][活動][自立]の7因子を抽出した。
高齢者イメージ、高齢者看護、体験、看護学生
ElderIy Image,Elderly Nursing,Experience,Nursing Sutudent
手術を受ける患者の高齢化が進んでいる現状の中で、入院前よりの継続的呼吸ケア教育を行い、術前の呼吸機能を高め、術後も呼吸機能の維持を図ることを目的とした。さらに、その学習が手術患者の心理的ストレス状態に対してどのような影響と効果が見られたのかを検討した。対象者は、全身麻酔で手術を受ける65 歳以上の高齢者、手術時間が5時間以上の胸・腹部手術、糖尿病、高血圧など合併症のある呼吸器合併症を併発しやすい患者とした。呼吸ケア教育の結果、術前肺活量の増加を認め、呼吸機能の予備能力向上に有効といえる。対処行動の平均値は2点高く、人生のできごとの中で手術はストレス度が高いといえる。そして呼吸ケア教育の学習は、前期高齢者の問題焦点型と後期高齢者の情動焦点型対処行動に有意差を認めた。高齢者にとって外来からの手術準備は、自分の調子に合わせてゆっくり実行できる。そして手術という心理的ストレスに対して、呼吸ケア学習を一つの手段として取り入れ、積極的コーピングと消極的コーピングを繰り返しながら手術に向き合うことができる。看護者は食事摂取や睡眠状況、他患者との交流など日常生活の変化に注意を払い、心理状態を把握した上で、患者が現実に直面できるように支援することが大切と考える。
術前呼吸ケア教育、術前後呼吸機能、術前高齢者対処行動、外来看護
島根県は高齢化率全国1位である。人口の高齢化は単に高齢者が増加すると言う側面だけでなく、老年人口の増加と関連して人々の健康問題においては悪性新生物や脳血管疾患・心疾患などの生活習慣病の罹患者の増加、さらにはターミナルケアの問題が付随してくる。高血圧症を基盤とする心疾患や脳血管疾患などの発症が多い島根県においては、それらの疾患患者を対象とする予防から在宅療養までを視野に入れた支援システムの構築が比較的早期より動き始めていた。しかし、それに対して悪性新生物を対象としたターミナルケアに関する支援システムの構築は立ち遅れているのではないかと考えた。我々は1996年度に島根県が実施したターミナルケア実態調査の中の介護経験者実態調査に協力し、家族を亡くして6か月経過した主介護者に終末期の状況を調査する機会を得た。調査結果を悪性新生物群とその他の疾患群(脳血管疾患や心疾患など)の2群間で比較分析した。その結果島根県におけるターミナル期にある患者の状況は、その他の疾患群に比べ悪性新生物群におけるケア内容やシステムづくりが立ち遅れていることが推測された。さらに、2000年度に島根県が実施した「島根県医療機関におけるターミナルケアのあり方に関する調査研究」の結果と本調査結果を比較し、その後の体制整備の進展状況について考察した。
ターミナルケア(緩和ケア)、悪性新生物、介護者、在宅ケア、 質問紙調査
terminal care (palliative care),cancer,caregiver,home health care,questionnaire survey
米国の新生児集中治療室の様子を伝えるノンフィクション作品とその翻訳に現れる医療語(Medspeak)について、翻訳の問題点と辞書記述の問題点などを明らかにした。
医療語、Medspeak、アメリカ英語、翻訳、対照言語学
Research has Proven the negative relationship between harmful or debilitating anxiety of students and second language achievement. A questionnaire was given to Japanese vocational college students to determine if they share common impressions about their skills in the target language(English). The study found that there are many common perceptions. The most significant one is that the skill of speaking English will be the most usefull asset in the future even though students felt the least proficient in speaking and liked it the least of the four language skills of reading, writing, listening, and speaking. This paper discusses how classroom procedures for teaching English were adjusted to reduce student anxiety; a brief evaluation of the effectiveness of doing so is presented.
anxiety,second language learners, four language skills, Vocational College
不安、第二言語の学習者、言語の4技能、専門学校
看護学生が精神看護実習を経験することで、学生が持つ精神障害者に対する印象がどのように変化するかを明らかにすることを目的に、B短期大学看護学科3回生100名を対象に、実習前後での精神障害者への印象変化を、自由記述式によるアンケートで調査し、KJ法により解析した。実習前では,看護学生は精神障害者に対する印象として「不安」、「恐怖」、「障害者に対するマイナスの感情」、「理解したいがわからない」、「困惑・戸惑い」、「緊張」、「傷つきやすい」、「めいる」の8個のカテゴリーに分類された。実習後には、学生が持つ患者への印象は「感じる力・表現する力がある」、「一生懸命生きている」、「私たちと同じ人間である」、「純粋な心」、「温かい」、「人格を持つ」、「環境に適応するのが困難」、「日常生活の困難さ」、「よくわからない」という9個のカテゴリーに分類した。印象の変化に対する関連要因では、患者の笑顔、患者と目を合わせる、話をしてくれた、声をかけてくれた、近づいてくれた等の患者の反応、患者の非言語的な表現がわかった、スタッフ・指導者の助言である。その知見をもとに看護学生に対する精神看護実習での教育方法を考察した。
精神看護実習、看護学生、精神障害者、印象
Psychiatric Nursing Training,Nursing Students,Psychiatric Patients, Impression
男子ジュニアスポーツ選手における肥満と生活習慣病の危険因子を検討するために、和歌山県を代表する男子ジュニアスポーツ選手で、比較的激しい運動を行っている学生を対象として,健康調査を実施した。その結果,運動を行っていても,肥満であることは生活習慣病危険因子を増大させ,将来生活習慣病に罹患する危険性が高くなると考えられた。従って,スポーツ選手においても,規則正しい生活習慣の指導と定期的な健康診断が必要であると考えられた。
男子ジュニアスポーツ選手,運動,肥満,生活習慣病
Junior sports players, Exercise, Obesity Metabolic syndrome