原著 | 中央診療部門における卒後1年目研修プログラムの成果と課題 | 藤原ヒロコ |
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原著 | 臨床実習指導者と看護学生の対話会の効果の検討 | 南前恵子 |
原著 | 臨床実習指導者と看護学生との相互理解を図る試み −臨床実習指導者と看護学生の対話会− |
松浦治代 |
原著 | 医系学生における喫煙実態と禁煙教育の課題 | 河野通快 |
原著 | 内臓脂肪型肥満に対する自己学習と自己決定に基づく教育プログラムの開発 | 塩飽邦憲 |
原著 | 研究的態度育成を目的とする授業の評価 | 佐々木順子 |
原著 | 受持ち患者の死を経験した看護学生の衝撃と対処の関連 | 長田京子 |
原著 | 連続携行式自己腹膜灌流(CAPD)療養者のセルフケア能力およびQOLと家族の生活力量の実態 −療養者による家族関係評価から− |
人見裕江 |
報告 | 手術室実習に対する指導方法の検討 | 山本佳子 |
報告 | 看護学生の早期体験学習における教育効果 | 宮脇美保子 |
報告 | 医療ドラマ『ER 緊急救命室』の教材化に関する言語文化的視点からの一考察 | 田中芳文 |
報告 | 看護学生の薬に対する認識変化 −「薬に関する講義」効果− |
食見忠弘 |
報告 | アメリカにおける健康保養地(ウエルネス・スパ)の実態とわが国での取り組み −健康づくりに対する意識・学習プログラムを中心に− | 佐藤和子 |
新カリュキラムによる看護教育が施行されて4年が経過した。卒後1年目の看護師は、入職後の臨床看護能力習得のために、継続した教育や指導が必要である。島根県立中央病院では、卒後1年目看護職員の教育研修目的を、看護実務者としての基本的能力の体得、看護観の育成、看護の基本的知識・技術の習得においている。卒後研修における中央診療部門の役割は、研修者が患者に安全・安楽に検査および治療の援助ができるように指導することである。今回、中央診療部門の卒後研修について教育目標の認知、情意、精神・運動の3つのカテゴリーから、プログラム改正後4年間の研修評価を行った。卒後1年目看護職員の研修達成度を、研修終了後1週間以内に研修生の自己評価と指導看護師の総括評価により分析した。検査介助における看護体験によって精神・運動領域の習得度が高いと自己評価した研修生ほど、指導看護師の総合評価得点が高いことが明らかになった。このため、本研修では、精神・運動領域の習得を効果的に行えるように研修者を支援することが効果的であり、研修生の特性に合わせた学習プログラムの開発と学習動機の支援が課題と考えられた。
看護学生にとって、臨床実習は不安とストレスの大きな要因の一つである。臨床実習の学習効果を高めるためには、学生のもっている不安やストレスを軽減することが必要である。T大学医療技術短期大学部看護学科とT大学附属病院では、臨床実習に対する学生の不安やストレスを軽減し実習効果を高めるための一つの試みとして、毎年1回「学生と臨床実習指導者との対話会」を行っている。平成12年度の対話会で、学生の臨床実習へ向けての不安や緊張、やる気に対話会がどのように影響しているかを明らかにし、学生の実習の達成感に患者、臨床実習指導者、教官、実習グループメンバーとの関係が影響するか調査した。対話会に参加した54人の看護学生(3年生)に対話会の前と後の2回、POMS(Profile of Mood States) とアンケートに記載してもらい、回答した41名(回収率75.9%)を対象に分析した。POMSの結果は緊張−不安、抑うつ−落ち込み、怒り−敵意、疲労、混乱の5つの領域で前より後が有意に低下し、活気は有意に上昇した。今後の実習への自信は、対話会の後の方が上昇し、緊張度は低くなった。このように、対話会は学生の実習に対する不安や緊張を軽減しやる気を増強させることが明らかになった。また、患者、臨床実習指導者、教官、グループメンバーとの関係がうまくいったと感じた学生ほど、実習の達成感も大きかった。
T大学医療技術短期大学部は、T大学医学部附属病院と連携し、臨床実習検討委員会を組織し、より良い臨床実習を目指して活動している。その活動で、臨床実習指導者が看護学生への教育的対応に困惑している問題を取り上げることにした。そこで、指導者と学生のお互いの気持ちを分かり合うことを目的に、実習に関する率直な思いを話し合う機会として「学生と指導者との対話会」を実施した。対象は、平成9年、10年度に行った対話会に参加した指導者49名と、短期大学部看護学科3年生82名である。対話会は、小グループに別れ、学生の思いを聞くことから始めていった。対話会前の指導者と学生それぞれに、相手に期待すること、相手から期待されていると思われることにはズレがあった。対話会後には、指導者は学生から心理的な支えとしても期待されていることを実感することができた。学生は自分が良い学びをすることが大きな役割であることを、そして互いを思いやり積極的に関わっていくことが大切であり、指導者と学生それぞれがどのような態度で臨めばいいのか考えることができた。
たばこの使用は「精神作用物質による精神及び行動の障害」に分類され、「ニコチン依存症」として禁煙指導やニコチン代替療法が行われている。しかし、日本の医学生の喫煙率は諸外国に比較して高い上に、医学教育の場で禁煙教育が実施されていない。そこで、島根医科大学医学科と看護学科の全学生を対象に、喫煙の有無、喫煙による健康障害やニコチン依存性についての知識、禁煙教育や禁煙環境整備に対する考え方、喫煙者には喫煙期間、禁煙失敗回数、ニコチン依存度、喫煙理由、喫煙したくなる時について自記式アンケートにより調査を行った(回収率51%)。喫煙率は男子学生24.7%、女子学生3.5%で、高学年になるほど高かった(医学科1年5.1%、6年23.7%;看護学科1年1.8%、2年5.9%)。喫煙による健康障害については、喫煙者97.1%、非喫煙者98.2%が認知しており、ニコチン依存性については、喫煙者97.8%、非喫煙者92.5%が認知していた。喫煙期間が長いほどニコチン依存度が高かった。また、喫煙する医系学生は、学内における禁煙教育や禁煙環境の整備に積極的でなかった。調査対象の喫煙者のほとんどは、喫煙による健康障害やニコチン依存性について認知していた。このことは、健康障害やニコチン依存性についての教育だけでは、喫煙率の更なる低下は期待できないことを示している。今後は、禁煙希望者への支援対策、及び受動的喫煙から非喫煙者を守る対策が、我々の施設では重要である。
近年、壮年期に多発する内臓脂肪型肥満は、動脈硬化や冠動脈疾患の危険因子として注目されている。一方、小径高比重の低比重リポ蛋白(LDL)は、内臓脂肪型肥満の良い指標であることが示唆されている。壮年女性を対象に、小径高比重LDLを含む身体所見および生活習慣に関する調査結果に基づき、自己の健康リスクと生活習慣を学習し、食行動改善と身体活動度を高める教育プログラムを実施した。教育プログラムによって、1日当たり摂取熱量は有意に約4%減少し、1日平均歩数も2,250歩増加した。体重は減少しなかったが、有意なヒップ囲減少とHDLコレステロール増加を認めた。LDL径変化では、悪化5人に対し、9人が改善していた。身体活動改善群ではLDL径の悪化0人、改善6人に対し、非改善群では悪化5人、改善3人と、身体活動改善によるLDL径改善効果が認められた。一方、食行動改善群ではLDL径は悪化1人、改善2人に対し、非改善群では悪化4人、改善6人であったため、LDL径の改善は、主に身体活動量の増加によると考えられる。本研究で、内臓脂肪型肥満に関する身体的な指標、特に小径高比重LDLの意義を明確にし、身体活動の目標を明らかにすることができた。しかし、参加者の中で、食行動変容に課題があったため、食行動の変容を促す認知、態度、技能の各領域での課題を明らかにした。
看護基礎教育の基礎分野における「科学的思考の基盤」に関わるカリキュラムとして本学の2年生前期・後期で行う「看護研究の基礎」について、授業内容、教育目標・行動目標に関する分析・評価を行った。評価方法は、授業の行動目標到達に必要な基本的態度に関する10項目について、「あなたは現在の自分についてどのように思っていますか?」という事前評価を、また前期の終了時と後期の終了時に、事前評価と同じ10項目のそれぞれで「あなたは、授業前と比べて、10の各項目に変化があったと思いますか?」という聞き方で、各項目変化についての事後評価を行った。授業開始時と、前期終了時・後期終了時の2回の事後評価で得た変化を、相関係数および因子分析と主成分分析によって検討した。分析数は55名である。評価項目のCronbach's alpha値は、事前評価で0.804、前期事後評価で0.810、後期事後評価で0.842だった。事前評価では、"他人の意見に耳を傾ける"、"人と協調して作業する"など他人に配慮する項目が高く、低いのは、"物事を論理的に考える"や"要点を簡潔に話す"であった。分析の結果、学生の変化は評価項目すべてに表れていたが、積極的態度を示す項目が項目全体の変化に大きな影響を与えており、"物怖じせずに討論に参加する"、"自分の意見を積極的に述べる"、"自分の意見を主張する"は、研究態度の向上において注目すべき因子であった。
研究目的は、受持ち患者(以下、患者)の死を経験した看護学生(以下、学生)の衝撃と対処の関連を明らかにし、教育の示唆を得ることである。在学中の臨床実習(以下、実習)で患者の死を経験した学生および新人看護師100名に、質問紙調査を行った。分析の結果、衝撃が大きいのは、実習中に患者の死に直面した時であった(p<0.05)。そして、死の衝撃を緩和するために多くの対処をしたのは、実習中に死に出あった学生(p<0.001)、意識不明瞭な患者を受持っていた学生(p<0.05)、遺体との別れをした学生(p<0.01)であった。衝撃と対処には相関が認められ(r=0.61)、衝撃高得点群は低得点群に比較して多くの対処をしていた(p<0.001)。教育においては、死の衝撃に応じて学生が対処できるよう「感情や思考の表出」や「心身の休養」を考慮した支援が重要との示唆を得た。
良好な家族関係と連続携行式自己腹膜灌流(Continuous Ambulatory Peritoneal Dialysis 、以下CAPDと略す)療養者のセルフケア能力やQOL、および家族の健康生活に対する生活力量との関係を明らかにするとともに、CAPD療養者の家族看護の課題を明確にすることを目的とした。方法は、全国の了解が得られたCAPD療養者およびその家族700組のうち、有効回答522組を(有効回答率 74.0%)を対象とし、CAPD療養者が感じる家族関係が記入されていた458組(65.0%)を分析対象とした。1998年6月から10月の調査である。分析は統計パッケージSPSS10.0を用い、療養者からみた家族関係の良否2群に分け、療養者のセルフケア能力やQOLおよび家族の生活力量についてMann-Whitneyの検定により比較した。良好な家族関係は、CAPD療養者が、家庭内における役割を遂行したり、社会参加をし易くしたりすると推察される。良好な家族関係のCAPD療養者は、全般的なQOLおよび健康に関するQOLが高いことが示された。良好な家族関係にあるCAPD療養者家族は、家族の関係を調整し、統合する力が高い。療養者がCAPDの維持期を安定した状態で過ごすためには、役割分担や役割を補完する力を強め、社会資源を活用する力を高める家族支援が重要となることが指摘された。
島根県立中央病院手術看護科(以下手術室)では、島根県立看護短期大学の学生を成人看護学実習・(急性期看護)の一環として受け持ち患者の手術日に見学実習という形で受け入れている。今回、平成12年5月8日平成12年12月1日の間に手術室見学実習をした島根県立看護短期大学3年次生33名を対象に、無記名アンケート調査と実習終了後に提出されたレポートの内容分析を行い、手術室見学実習の指導方法について検討した。アンケートは「手術室看護に関する知識と技術」「対象の理解」「看護観および倫理観」「看護学生としてのアイデンティティ」の4つのカテゴリー16項目から構成し、レポートについては「手術室実習に対するイメージの変化と影響因子」「手術室看護婦の役割」「手術室看護婦に求められる能力」の3カテゴリーに分類した。学生は手術室見学実習を通して、「手術室看護に関する知識・技術」「対象の理解」を学習できており、手術室見学実習は「看護観および倫理観」「看護学生としてのアイデンティティ」の確立にも良い影響を与えていることがわかった。また、専任の臨床実習指導者に任せるのではなく、スタッフ全員が担当するという現在の指導体制に特に問題はないことも明らかになった。そして、自由記載レポ−トとともに、アンケ−トにより達成度を自己評価するという方法は、指導方法(評価方法)として、重要であることが明らかになった。
本研究は、4年制の看護基礎教育において1年次前期に実施した早期体験学習の教育効果を学生のアンケート調査に基づいて検討したものである。研究方法は、体験学習が終了した看護学生を対象に、その実施時期、方法、意義等に関する項目について無記名で記述されたものを分析した。T大学における早期体験学習は、専門的知識や技術を身につける以前の段階で、医療や福祉施設の現場でボランティアとして他者を援助するという直接体験の学習方法をとっている。調査結果から、この早期体験学習は、学生にとってその後の看護学を学ぶうえで大きな動機づけとなっていることがわかった。特にT大学の学生は、1年次は他学部の学生と一緒にTキャンパスで学び、2年次以降は90kmも離れた医学部のあるYキャンパスに移動しなければならない。このように1年次には、看護学を学んでいるという実感をもちにくい学習環境にある中で、この早期体験学習は学生に強いインパクトを与えており、教育方法として効果があることがわかった。
米国の医療ドラマERを英語の講義用教材として使用するためには, 医療だけでなく、幅広い分野の英語表現やそれを取り巻く文化や社会について明らかにして提示しなければならない。実際の講義で、学生がERを理解するために問題となった専門用語、英語のイディオム、スラング、固有名詞、諺についてその具体例を示した。
看護学生が薬をどのように認識しているのか、また薬について講義で学ぶことによって、その認識がどのように変化していくのかを知るため、自記式のアンケートを行なった。アンケートでの記載内容を6つのカテゴリー(効能、副作用、薬の相互作用、服薬方法、作用機序、その他)に分類し、「薬に関する講義」受講前後での各カテゴリーでの記載数と記載内容の変化を検討した。受講前では、副作用に関する記載が最も多く(全記載数の44.8%)、次いで効能(32.5%)、服薬方法(11.8%)、その他(8.5%)とつづき、薬の相互作用や作用機序に関する記載は少なかった。一方、受講後では作用機序に関する記載数が最も多くなり(全記載数の31.0%)、効能のみならず副作用、服薬方法、薬の相互作用に関する記載も作用機序と関連した内容となっていた。このことは「薬に関する講義」受講後では、薬の作用機序に関心が高まり薬に対する認識に変化がもたらされたことを示唆する。
長寿高齢社会を迎え、人々の健康で充実した人生を送りたいというニーズに応えていくために、また国の施策として「健康日本21」を推進していくためにも、健康休暇の普及を推進し、その受け皿である健康保養地構想を具体化していく必要がある。そこで、健康保養に関して先進国の一つであるアメリカのウエルネス・スパといわれている健康保養施設の内容と健康保養プログラムについて、実際に訪問して見学・体験からその実態をまとめ、さらに日本での現状と課題を検討したものである。アメリカのスパとしては、代表的なエサレンインスティチュートなど3施設をあげ、施設のねらいや具体的なプログラムを紹介した。いずれも自然環境を生かし、食事も自然食など食材を吟味したものを提供し、多様なワークショップを開催している。また、ヨガや瞑想などメンタルな側面に力をいれたプログラムが多く取り入れられている。日本が本格的に健康保養施設に取り組んだのは1995年以降であり、ハード面もソフトであるプログラム内容もこれからの問題である。その前提として、自分の健康は自分のものであり、自分が責任もって積極的に健康づくりに取り組まなければならないというセルフケアの心を育てること、休暇、あるいは休養に対する考えを改めていくことが必要と思われる。