原著 | A公立短期大学における保健師・助産師・看護師養成課程卒業生・修了生の同一県内就職者の定着状況 | 吾郷美奈恵ほか |
---|---|---|
原著 | 治療過程に在る初発・再発および定期的外来受診を続ける成人期乳がん患者のQOLに関わる要因:(第1報)レジリエンスの相違および心理社会的側面からの検討 | 若崎淳子ほか |
原著 | 患者参画型糖尿病教育に参加する精神障がい者のエンパワメントプロセス | 石橋照子ほか |
報告 | 在宅介護者の介護負担における性別毎の関連要因 | 栗林佑希子ほか |
報告 | X県内公立精神科病院・病棟に勤務する看護師の職務満足度調査結果の比較検討 | 樫葉雅人ほか |
報告 | 生命危機状態の患者に対する看護師のホリスティックケア ―看護師のかかわりから― |
前信由美ほか |
報告 | 教育指導者の学習環境デザインにおける学習の必要性とその学習方法に関する教育責任者と教育指導者の認識の差異 | 土肥美子ほか |
報告 | A県内に就職した公立短期大学看護師養成課程卒業生のキャリアの現状と卒業後の看護実践能力における自己評価 | 別所史恵ほか |
本研究は、A公立短期大学における看護師養成3年課程、助産師養成1年課程、保健師養成1年課程の卒業・修了時の進路状況と、大学所在地のB県内で卒業・修了時に就職した者の定着状況を明らかにし、公立大学の役割や使命について検討することを目的とした。
調査は、大学が保有する進路届けを分析するとともに、B県内で就職した卒業・修了時の就職施設・機関毎に、年度毎の就業者数の回答を依頼し、離職率や定着率を算出した。看護師は1997年度・助産師と保健師は1998年度から2012年度までの卒業生と修了生を分析対象とした。また、助産師と保健師はその免許で就業した者とし、保健師の定着状況は行政機関とした。
この間の各養成課程におけるB県内就職率の平均は、看護師70.1±8.3%、助産師48.5±14.2%、保健師45.0±12.7%で、離職率は看護師3.7%、助産師4.0%、保健師2.6%であった。また、定着率は職種による有意な差は認めなかったが、看護師は病床数が多いほど定着率は高く、400床以上は399~200床(p<.001)や199床以下(p<.01)に比し有意な差を認めた。
B県の病院における看護職員の離職率は全国より低く、A公立短期大学卒業・修了時のB県内就職者の離職率はB県より低かった。就職施設・機関は、実習機関・施設や継続教育等で大学が関与していることから親和性が高いこと等が要因と推察される。引き続き、継続教育への参画などニーズに基づく地域貢献と学生へのキャリア教育を推進することが重要である。
In the nurse course, the midwifery course and the public health nurse course at A public junior college, we surveyed career choice and continued employment rate within B prefecture and discussed the role and the mission of the public college. Surveys were conducted on graduates of A public junior college at every employment place and graduation year. This report is a longitudinal study over the 16-year period of 1997-2012 (nurse) and the 15-year period of 1998-2012 (midwife and public health nurse).
Mean employment rates within B prefecture were as follows: nurse course graduates, 70.1%; midwife course graduates, 48.5%; public health nurse course graduates, 45.0%. Mean unemployment rates within B prefecture were as follows : nurse course graduates, 3.7%; midwife course graduates, 4.0; public health nurse course graduates, 2.9%. Unemployment rate for nurses with many hospital beds was significantly lower (p<.01). There was no significant difference due to three professions on continued employment rates. Nurses with more than 400 hospital beds were more stable than are nurses with both 399-200 hospital beds (p<.001) and below 199 hospital beds (p<.01).
Compared with national average, unemployment rates of three professions at B prefecture were lower. And compared with prefectural average, unemployment rates of graduates of A public college were lower. The reason of lowered unemployment rate is that the college is closely related with graduates' workplaces in nursing training program and continuing education and graduates familiarized themselves with workplaces. Our public college must serve the educational and cultural needs of its communities like providing for continuing education.
保健師、助産師、看護師、就職、定着率
public health nurse, midwife, nurse, employment, continued employment rate
本研究はレジリエンスに注目し、乳がん診断から10年未満に在る初発・再発および定期的外来受診を続ける成人期乳がん患者のQOLに影響する要因を明らかにすることを目的とした。QOL-ACD、GSES、SRS-18、精神的回復力尺度、個人的属性等で構成された自記式質問紙調査票を用いて郵送法により707名に配布、447名より回収(回収率67.5%)、このうち401名から有効回答が得られた(有効回答率84.1%)。t検定の結果、レジリエンスの得点が有意に高かったのは、個人的要因では就業有り群、世帯収入500万円以上群、短期大学・大学・大学院修了群、独居群、50歳以上群、父の支え有り群、疾病要因では初発治療群であった。重回帰分析の結果、QOLに良い影響を示したのは、初発乳がん患者ではレジリエンスの一要素である肯定的未来志向や感情調整、定期的外来通院患者では肯定的未来志向や新奇性追求、再発乳がん患者では感情調整であった。レジリエンスは治療過程に在る初発・再発および定期的外来受診を続ける成人期乳がん患者のQOLに有意な関連を示した。また、抑うつや不安でないことは、病期を問わず患者のQOLに良い影響を示した。
The present study focused on resilience, and aimed to elucidate the factors affecting the quality of life (QOL) of adult breast cancer patients diagnosed with breast cancer less than 10 years ago who have primary or recurrent breast cancer or are continuing to make regular outpatient visits. A self-report questionnaire consisting of the QOL Questionnaire for Cancer Patients Treated with Anticancer Drugs (QOL-ACD), General Self-Efficacy Scale (GSES), Stress Response Scale-18 (SRS-18), the Resilience Scale, and personal attributes was mailed to 707 patients. Of the 447 responses obtained (response rate, 67.5%), 401 were valid responses (valid response rate, 84.1%). T-test results showed that resilience scores were significantly higher for patients with the following personal factors: those who were employed; had a household income of ≥ 5 million yen; had graduated from junior college, university, or graduate school; were living alone; were ≥ 50 years old; and had paternal support among. Among the disease factors, those who were receiving treatment for primary breast cancer had significantly higher resilience scores. Multiple regression analysis results showed that factors that have positive effects on QOL were Positive Future Orientation and Emotional Regulation, which are elements of resilience, among patients with primary breast cancer, Positive Future Orientation and Novelty Seeking among patients making regular outpatient visits, and Emotional Regulation among patients with recurrent breast cancer. Resilience was shown to be significantly related to the QOL of adult breast cancer patients who have primary or recurrent breast cancer or are continuing to make regular outpatient visits and are receiving treatment. Furthermore, the absence of Depression-Anxiety was shown to have a positive effect on the QOL of patients regardless of disease stage.
乳がん患者、レジリエンス、QOL、成人期
breast, cancer, resilience, QOL, adult stage
精神科デイケアに通所する糖尿病を併せ持つ精神障がい者を参加者として、患者参画型糖尿病教育の実証研究を行った。方法として集団心理教育の進め方を用い、参加者が希望するテーマの学習会とディスカッションを繰り返し、糖代謝のセルフモニタリングをしながら、目標を設定し生活改善に取り組むものである。これを2年間継続して実施した。
参加者11名のうち1年間以上継続参加した9名を分析対象とし、参加観察データとフォーカス・グループ・インタビュー4回分の内容を分析データとした。質的統合法(KJ法)で分析統合を繰り返し、7つのシンボルマーク【興味・関心の高まり】【帰属意識と開放性の高まり】【他者の肯定と支え合い】【問題意識と現実に向かう意欲】【予期性不安の表出】【満足感と自己成長の自覚】【生活の質改善とコントロール感の獲得】にまとめられた。
このことから、糖尿病改善に取り組む行動変容がみられただけでなく、エンパワーのプロセスが漸進したことを確認できた。
We studied the patient participation in planning style of diabetes education. The participants of this study were the mentally handicapped outpatients of the daycare center complicated with diabetes. Group psychological education was used in the classroom. The participants had repeated the meetings with discussion to learn their favorite themes. They performed self-measurement of the blood sugar and HbA1c and analyzed it. And they defined their goals and tried to improve their lives for two years.
It was analyzed the 9 people who continued participation for more than one year of the participants 11 people. Observations of the diabetes education and four focus group interviews were used as our data. The KJ method was used to analyze and integrate the data. As a result, the data was classified under seven symbol marks as follows: "heightening interest and concern", "heightening of a sense of belonging and openness", "acceptance of others and mutual assistance", "problem consciousness and motivation to reality", "expression of anticipatory anxiety", "awareness of satisfaction and self-actualization", and "improvement of quality of life and acquisition of control". Thus we could confirm that the participants showed behavioral changes toward amelioration of diabetes as well as progressive empowerment.
精神看護学、精神障がい者、糖尿病、患者参画型糖尿病教育、エンパワメント
Psychiatric Nursing, mentally handicapped outpatients, diabetes, the patient participation in planning style of diabetes education, empowerment
【目的】在宅介護者の介護負担と性別毎の関連要因を明らかにし、在宅介護者における性差を加味した支援を考える資料を得る。
【方法】対象者は、要介護2以上の者を在宅で介護している者とし、郵送法による無記名自記式質問紙法で行った。介護負担はZarit介護負担尺度を用いて測定した。介護負担に関連する要因を検討するため、性別毎に重回帰分析を行った。
【結果】有効回答は412名(有効回答率37.2%)であった。介護者は男性97名、女性315名であった。介護負担に性差はなかった。介護状況が男性介護者と女性介護者で異なることから介護負担に関連する要因は、性別毎に求めることにした。重回帰分析の結果、介護負担について男性介護者の関連項目は、「買い物や外出」、「友達や近所との交流の減少」、「要介護者への接し方」に困っている、「目が離せない」の4項目であった。女性介護者の関連項目は、「精神的不調」に困っている、介護の原因に「糖尿病」がある、「排泄介助」に困っている、介護情報源に「兄弟姉妹」がいない、「認知症への対応」、「通院」に困っているの6項目であった。
男女の共通項目は、在宅介護継続意思の「施設希望」と「料理」、「自由時間の減少」に困っているの3項目であった。
【結論】在宅介護者の介護負担に性差はなかったが、性別毎の関連要因は異なることが明らかになった。介護者への支援を行う際は関連要因の性差を加味して行う必要性が示唆された。
Zarit介護負担尺度、性別、介護者、在宅、重回帰分析
本研究は、X県内の特徴の異なる公立精神科病院において、各病院間での職務満足度の違いを比較することで、それに影響を及ぼす要因を明らかにし、その改善につなげるための方策を考えた。また、平均在院日数の低い精神科病棟及び高い精神科病棟に2分し、看護師のどのような要因が職務満足度に関連するのかも検討することを目的とした。
対象施設には、X県の公立病院4施設と公立大学附属病院1施設を選び、その施設の精神科病棟に勤務する保健師・助産師・看護師・准看護師の資格を有する者を調査の対象とした。職務満足度の測定には、「看護師の仕事に対する価値のおき方と満足度」(中山ら:2001)の質問項目を使用し、自記式質問紙調査をおこなった。
各病院間の職務満足度の多重比較を行った結果、「管理システム」、「仕事上の人間関係」、「専門職性」の各スケールにおいて、公立単科精神科病院と大学附属病院が公立総合病院精神科と比べ有意に高い結果となった。次に、平均在院日数の低い2つの精神科病棟の群(L群)と平均在院日数の高い2つの精神科病棟の群(H群)に分け、ロジスティック回帰分析をおこなった。職務満足度に影響する属性要因において、L群では勤務体制、職種、看護師経験年数、H群では年齢がそれぞれのスケールで主な関連する項目であった。公立総合病院精神科(H群)では職務満足度を高める方策を考えていくことの必要性が示唆された。
精神科看護師、公立精神科病院、職務満足度
psychiatric nurses, psychiatric wards in public hospitals, job satisfaction
生命危機状況にある人に対する看護実践では、ホリスティックケアの実践が求められる。何故ならば看護師は、生きた身体と、生きた心と、その両者が一体となって現れる感情とに働きかけなければならないからである。それは人間の生命であり、健康で生きたいという強い意思と力を持った人間への働きかけである。そして、生命危機状況にある患者をケアする現場で働く看護師は、自分に託された心身ともに傷ついた生命に対し、全人格を駆使して働きかけなければならない。そこで、看護師の患者とのかかわりの場面を参加観察し、ホリスティックケアの内容について検討した。看護師の参加観察場面からは、安全管理、安楽の提供、説明と同意、倫理観、観察、コミュニケーション、環境調整が導き出された。またインタビュー結果からは、患者の特性や治療の適切性と環境の整備、他職種との協働、患者のニーズと自己の能力を考えたケアの実施、患者の権利の尊重、自身の成長と心のゆとりが抽出された。参加観察とインタビュー結果の関係性からは、認識していることが援助の行動として表出されていた。また生命危機状態にある患者に対して、看護師は自己の全人格でホリスティックケアを遂行しているという事が推察できた。看護場面を取り上げ検討することは、看護活動過程における知と省察を思考と活動、理論と実践という二項対立を克服した専門家モデルを提示することが可能になると推測する。
生命危機状態、かかわり、ホリスティックケア
【目的】教育指導者の学習環境デザインにおける学習の必要性とその学習方法に関する教育責任者と教育指導者の認識の差異を明らかにすることである。
【方法】全国の病床数500床以上の医療機関の教育責任者74名と教育指導者405名に、組織、活動、道具の学習環境デザインを問う36項目とその学習方法について質問紙調査を実施した。
【結果】教育責任者の方が教育指導者より<組織デザイン><活動のデザイン>に関する教育指導者の学習の必要性を高く認識する傾向がみられた。<組織デザイン><活動のデザイン><道具デザイン>に関する教育指導者の学習方法では、教育指導者の方が教育責任者に比べて専門家からの学びを必要とする傾向が明らかになった。
【考察】教育指導者の学習環境デザインに関する学習の必要性と学習方法に対する教育責任者と教育指導者との間に認識の差異が認められたことから、教育指導者の育成プログラムには教育責任者の観点からだけではなく、教育指導者の志向を踏まえた企画が求められる。
Objective: The objective of this study was to clarify the differences between educational supervisors and clinical mentors as regards their perception of clinical mentors' learning needs and preferred learning methods in relation to the design of clinical learning environments.
Method: A questionnaire survey concerning mentors' learning needs and preferred learning methods, which comprised 36 items related to the design of the organization, activities, and tools within clinical learning environments, was conducted with 74 educational supervisors and 405 clinical mentors from medical institutions across Japan with more than 500 beds.
Results: As regards clinical mentors' learning needs in relation to the design of the organization and activities, educational supervisors were more likely to recognize these needs than clinical mentors were. In terms of clinical mentors' preferred learning methods in relation to the design of the organization, activities, and tools, clinical mentors had a stronger tendency to recognize that they needed expert guidance than the educational supervisors did.
Discussion: The results suggest that there are differences between educational supervisors and clinical mentors in terms of the perception of clinical mentors'
learning needs and preferred learning methods in relation to the design of clinical learning environments. The education program of a clinical mentor needs to include a plan regarding the preference of clinical mentors as well as the viewpoint of educational supervisors.
教育責任者、教育指導者、学習方法、学習環境デザイン、育成プログラム
educational supervisor, clinical mentor, learning method, learning environment design, education program
A県内の病院に看護師として就職したA公立短期大学卒業生・修了生のキャリアの現状と看護実践能力から、職業的発達の特徴を明らかにすることを目的とした。27施設282名の卒業生へ調査を実施し170名の有効回答を得た。職業的発達は「看護実践能力自己評価尺度:CNCSS」を使用し、<達成の程度>を、「自信を持ってできる(4点)」、「まあまあ自信がある(3点)」、「あまり自信がない(2点)」、「自信がない(1点)」の4段階評価である。その結果、キャリアを促進する要因として「キャリアアップのために協力してくれる職場の同僚や先輩看護師の人間関係」(54名)、キャリアを阻害する要因としては「学ぶための時間がない」(79名)が多かった。CNCSSの比較分析は経験年数1~5年目の50名を対象とした。経験年数別各コンピテンスの平均値の比較では、「基本的責務」の1年目と5年目、「看護の計画的な展開」の1年目と4年目、「ケアコーディネーション」の1年目と3年目で有意差が認められた(p<0.05)。<達成の程度>について5年目と1年目のコンピテンスの平均値の比を「伸び率」として表し、伸びの大きさを検討した結果、「継続看護」のみマイナスの伸び率となった。各コンピテンスの平均値は経年的に高くなる傾向にあった。
看護実践能力、自己評価、看護実践能力自己評価尺度、キャリア発達
Clinical nursing competence, Self-evaluation, Clinical Nursing Competence Self-assessment Scale (CNCSS), Career development