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『日本医学看護学教育学会誌』第17号 (2008年7月20日発行)

早期新生児死亡を体験した助産学生の心理的変化
〜教員、臨地実習指導者のサポートについて考える〜
Mental process of a midwife student who experienced a neonatal death.
〜Support from teachers and nursing practice instructors 〜

藤田小矢香、遠藤有里、西村正子
Sayaka Fujita, Yuri Endo, Masako Nishimura
鳥取大学医学部保健学科母性・小児家族看護学講座
Department of Women's and Children's Family Nursing, School of Health Science, Faculty of Medicine, Tottori University

概要(Abstract)

助産実習において早期新生児死亡を体験した助産学生の心理過程を考察し、教員および臨地実習指導者のサポートについて明らかにすることを目的に研究を行なった。研究期間:平成18年7月から10月。研究方法は実習中に学生が語った内容や面談内容から情報収集を行い、記録から得た情報をKJ法で分析した。その結果108の記録単語から8つの大カテゴリー、32のサブカテゴリーが抽出された。学生は悲観過程の中【自分自身の感情に向き合う】【医療者として良い関わりをしなくてはならないという思い込み】【適切な対処方法の模索】【他の価値観に触れる】の4つの過程を経て【自信の回復】へ向かっていた。

悲観過程の中、実習に取り組む学生に対し教員及び臨地実習指導者のサポートは学生の感情を受け止め受容することであった。その後教員は対話を通して問題、問題解決方法の明確化を計り、経験と知識の統合を行なうことで学生の学習効果を高めていた。また、臨地実習指導者は学生を受容し、モデルを示すことが学生の自信の回復につながっていた。教員と臨地実習指導者は連携し悲観過程にある学生の心理的サポート、教育的サポートが必要であることが示唆された。

キーワード(Keywords)

早期新生児死亡、助産学生、教員、臨地実習指導者
neonatal death, midwife student, school teacher, nursing practice instructor

家族形態別にみた母親の育児ストレスに関する研究
〜家族APGARと育児ストレス尺度による検討〜
Child-rearing Mothers under Stress
~Compare Family APGAR with rule child-rearing ~

藤田小矢香、西村正子
Sayaka Fujita, Masako Nishimura
鳥取大学医学部保健学科母性・小児家族看護学講座
Department of Women's and Children's Family Nursing, School of Health Science, Faculty of Medicine, Tottori University

概要(Abstract)

本研究では家族形態と育児ストレスに焦点をあて核家族と拡大家族の家族APGARと育児ストレスの関連を明らかにすることを目的とした。地方都市で子育てをする核家族と拡大家族の母親を対象に質問紙調査を実施した。調査表は575名に配布し、回収390名(回収率67.8%)であった。

母子家庭と家族人数において核家族と拡大家族の間で有意差が認められた(p<0.05)(p<0.01)。

家族APGARにおいて核家族と拡大家族の間に有意差は認められなかった。しかし家族機能障害ありは核家族に多い傾向にあり、今後核家族が増加すると予測されるため家族機能障害の具体的な内容を分析し、支援する必要がある。

育児ストレス項目では「自分一人で子どもを育てているのだという圧迫感を感じてしまう」で核家族と拡大家族の間で有意差が認められた(p<0.01)。

核家族,拡大家族ともに家族機能障害があるほど育児ストレスが高いことを有意に示した。

キーワード(Keywords)

ストレス、育児、核家族、拡大家族
stress, child-rearing, nuclear family, extended family

中学生における生活習慣病予防の試み
ー講座選択学習による介入効果についてー
A trial of Metabolic syndrome prevention in junior High School Student
-Effects of optional group study on life style modification-

隅田恵理子、内村達也、塚本佳奈、那須康弘、有田幹雄、武田眞太郎
Eriko Sumita, Tatsuya Utimura, Kana Tsukamoto, Yasuhiro Nasu, Mikio Arita, Sintaro Takeda
和歌山県立医科大学看護短期大学部
Nursing College, Wakayama Medical University

概要(Abstract)

健康チェックを受診している中学生を対象として「健康的なライフスタイルを確立しよう」の講座選択学習の履修者(男女)と非履修者(男女)の計4群に分け、講座選択学習としての介入が生活習慣にどのような効果をもたらすのかを比較検討した。講座選択学習の履修者と非履修者との間に生活習慣、特に睡眠状況、運動習慣に関してその差が見られた。すなわち、就床時刻が午前0時以降の者の学年進行に伴う増加率は、特に男子の履修者で少なかった。次に講座選択履修者では、学年進行に伴う運動量減少の傾向が弱くなっていた。また、食塩過剰摂取以外の食生活の項目では、特に履修との関係は見られなかった。

キーワード(Keywords)

中学生、講座選択学習、生活習慣病
Junior high school student, Optional course study, Metabolic syndrome

飲食店とカラオケ店における受動喫煙の実態
Conditions of Secondhand Smoking in Restaurants and Karaoke Bars

奥野弘子、友安えりか、水田真由美、森岡郁晴
Hiroko Okuno、Erika Tomoyasu、Mayumi Mizuta、Ikuharu Morioka
和歌山県立医科大学 保健看護学部
School of Health and Nursing Science, Wakayama Medical University

概要(Abstract)

To clarify the conditions of secondhand smoking in the shops that children often visit, the densities of suspended particulate were measured with a digital dust meter in two family restaurants, a coffee shop and two karaoke bars. The levels of carbon monoxide in the breath of 22 workers (4 smokers and 18 nonsmokers) of such shops were measured with a smoker analyzer. They were also asked to fill a questionnaire on secondhand smoking. In a family restaurant where nonsmoker area was imperfectly separated from smoker area, the density of suspended particulate at the nonsmoker area rose as one at the smoker area increased, and exceeded the standard value (0.15mg/m³) of the smoking area. In the coffee shop where the nonsmoker area was closely near the smoker area, the density of suspended particulate at the nonsmoker area showed the same density at the smoker area. These show the possibility of secondhand smoking at the nonsmoker area imperfectly separated from the smoker area. At a karaoke bar, the density of suspended particulate in a room exceeded the standard value of the smoker area most of the using time, when a user smoked there. The levels of carbon monoxide in the breath increased 2 ppm or more with 3 nonsmokers at the end of study. Such workers were proved to be exposed to secondhand smoking. Twelve of 18 nonsmokers had the knowledge on health hazard of the secondhand smoking, but 7 of 18 nonsmokers usually took no action to avoid the secondhand smoking. These results suggest the necessity of measure to protected children from the secondhand smoking in the shops.

キーワード(Keywords)

受動喫煙、浮遊粉じん、呼気中一酸化炭素濃度、飲食店、カラオケ店
secondhand smoking, suspended particulate, carbon monoxide in the breath, restaurant, karaoke bar

就職前(就職を考える際/就職直前)に学生が看護師に1対1で同行する方法を取り入れた研修による学生の体験と学び
Student's experience and learning by one-on-one training with the nurse before starting their job (job hunting in summer/ starting the job in spring).

杉田塩、込山洋美、岡田綾、日下部一子
Shio Sugita, Hiromi Komiyama, Aya Okada, Kazuko Kusakabe
順天堂大学医学部附属順天堂医院看護部
Department of Nursing, Juntendo University Hospital

概要(Abstract)

当院では看護学生を対象にリアリティショックの緩和を目的に春と夏に1日研修を実施している。研修方法は1人の看護師に1人の学生が同行し、学生は看護師のケアを見学し患者の了解が得られれば看護師の指導下で基礎的な看護技術を経験するという方法をとっている。今回この方法の研修における看護学生の体験と学びについて検討を行った。その結果、研修で学んだこととして、【ケアのやり方】や【看護師としての姿勢】【看護師としての役割と責任】【仕事の仕方】【仕事の流れ】【病院の環境】のカテゴリーが抽出された。今回の研修では1人の看護師と時間を共有し、看護師という職業を学ぶことができたものと考えられた。また、この研修方法は、参加者が看護業務を俯瞰することにより、看護師の日々経験している複雑な業務の繋がりや、看護師の行為を裏付ける意図を学べる研修であったと評価できた。

キーワード(Keywords)

1対1同行研修、看護師という職業、看護学生、リアリティショック
one-on-one training, occupation as nurse, nursing student, reality shock

フィールドワークを活用した授業の教育効果と地域への波及効果
The impact of field-work class on the education effect to students and on environmental influence to residents

矢倉紀子、松浦治代、原口由紀子
Noriko Yakura, Haruyo Matsuura, Yukiko Haraguchi
鳥取大学医学部保健学科
Tottori University Faculty of Medicine School of Health Science

概要(Abstract)

本学は過疎地・高齢化による健康課題に取組むことのできる医療人育成を教育目標にあげ、具体的カリキュラムとして「過疎地看護」をもうけている。その授業において、同一集落で3年間継続したフィールドワークを行う授業展開を試み、その教育効果と地域への波及効果について検討した。

学生への教育効果としては、①保健師に有用な情意領域に関する効果、②地域看護の基盤概念に関する理解の深化、③学習レディネスの高揚、④過疎地看護の特性理解の4つであった。

地域への波及効果としては、①地域診断を住民参画で実施することができ、そのツールとしてPRECEDEPROCEED モデル(以後PPMと略す)の活用は有効であった. ②健康課題に対する取組みを住民主体で進めることができた。その原動力となったのは、住民同士の忌憚のない話し合いであったが、その手法としてフォーカス・グループ・インタビュー法の活用は有効であった。③3年間の継続した取組により、地域住民の意識を変え、分煙の実行、運動習慣の定着化、高齢者支援などの地域的な取組に発展させることができた.

キーワード(Keywords)

地域看護学教育 中山間地 フィールドワーク 地域診断 健康づくり活動
community health nursing education, hilly-mountainous region, field-work, community diagnosis, community-based health promotion

保育園実習前後における作業療法学生の自己評価と指導
Occupational Therapy Students' Self-Evaluation in Nursery School Practice

三戸香代
Kayo Mito
北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科
Department of Occupational Therapy, School of Allied Health Sciences, Kitasato University

概要(Abstract)

作業療法学専攻の学生に対して保育園実習の前後に質問紙調査を行った。それにより、学生は実習中の行動目標に対して、どのような自己評価をしているのか、どのような指導を保育士に求めていたのかを明らかにした。

その結果、保育園では子どもの方から学生に近づいてくれるため、実習前と比べて「子どもと遊ぶことができた」「子どもに自分から関われた」と感じていた。しかし、「子どもの様子を口頭で保育士に報告する」、「指示がなくても気をきかせて行動する」といった行動については「できなかった」と感じていた。学生が求める指導の段階として、学生が自分なりに工夫して行っていることには、保育士に「支持」を求めていた。さらに、笑顔で子どもに接する、子どもの話を聞くといったことでも学生は認めてほしいと感じていた。食事介助など学生がその場で判断し行動したものの自信がないことには「助言」を求めていた。さらに、おむつ交換など学生があまり経験したことのない介助の方法や、子どものしかり方については「指示」を求めるものが多かった。ただし、学生は保育士に対して自分の考えを伝えたり、自ら助言や指示を求めたりするのが苦手であった。そのため、保育士の配慮に反して、学生は「任せてほしいのに」という不満を感じることもあった。

キーワード(Keywords)

自己評価 保育園 作業療法学生
Self-Evaluation, Nursery School Practice, Occupational Therapy Students

健康な高齢者のフットケアに関する実態調査
Fact Finding Survey on Foot-care of Community Resident Elderly

西田佳世
Kayo Nishida
愛媛県立医療技術大学保健科学部看護学科
Ehime Prefectural University of health sciences

概要(Abstract)

高齢者の生活の質、生命の質を低下させ、生きがいを失うきっかけは、自分自身の足で歩けなくなることである。歩くための足作りには、下肢筋力やバランス機能のみならず、足そのもののケア(以下、フットケア)が重要である。そこで、本研究では、健康な高齢者のフットケアに関する実態を明らかにし、その実態とニーズに合った効果的なフットケア教育介入を実践するための基礎資料を得ることを目的に、健康な高齢者267名を対象に実態調査を行った。分析対象は、65歳以上の168名であり、郵送による無記名自記式調査とした。内容は、属性、自分の足への関心、フットケアの状況、足トラブルの現状、転倒への意識、日常の気分、日常の楽しみで構成し、t検定およびχ²検定にて分析した。その結果、健康な高齢者は、自分の足の手入れの必要性の自覚はあっても、転倒経験や転倒恐怖感が少ないことから、フットケアの利益の実感に乏しく、予防的なセルフケア行動が取れていない実態が明らかになった。そして、足トラブルが生じることによって、足への関心を持ち、ケアを行う傾向があった。健康な高齢者は、健康ゆえに、日常的に足のケアを行っていくことの利益の自覚を実感する機会が少ないため、足トラブルを生じる前から、足の手入れはなぜ大事なのか、大事にするとはどういうことか、それによって得られる利益は何かという動機づけを強化し、予防的セルフケアを提案していくことが重要である。

キーワード(Keywords)

高齢者、フットケア教育、自覚、セルフケア 動機づけ
Elderly person, foot-care education, consciousness, self-care, motivation

精神看護実習における精神障害者への看護学生の社会的態度に関する検討
A study of social attitudes of nursing students toward patients during psychiatric nursing practice

加藤知可子¹、水馬朋子²

Chikako Kato¹、Tomoko Mizuma²
¹兵庫大学、²県立広島大学
¹Hyogo University、²Prefectural University of Hiroshima

概要(Abstract)

本研究は、A大学看護学科4回生60名を対象として、社会的距離尺度法を用いて、精神看護実習前後における精神障害者への社会的態度を検討することを目的とした。分析は社会的距離尺度法を用い、精神看護実習前後で比較・検討を行った。その結果、1)精神障害者に直接的に接触しない精神看護実習前では、社会的距離尺度法において拒否的な態度を示すことが明らかとなった。2)精神障害者に直接的に接触する精神看護実習後では、社会的距離尺度法においてより好意的あるいは受容的な態度を示すことが明らかとなった。以上により、精神障害者への社会的態度は、精神看護実習における精神障害者との接触体験によって、より好意的あるいは受容的な態度変容がもたらされることが示唆された。

キーワード(Keywords)

看護学生、精神障害者、精神看護実習、社会的態度
nursing students, the mentally disabled, psychiatric nursing practice, social attitude

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