報告 | ICT活用による臨地実習指導者と大学教員による連携・協働したオンライン実習のあり方に関する一考察 | 纐纈 祐子,大槻 優子 |
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報告 | 自己調整学習のプロセスからみた新人看護師の看護技術習得の構成要素 | 大園久美子,花田 妙子 |
報告 | 中堅看護師のキャリア発達支援における研修支援に関する検討 ―離職経験のある中堅看護師へのインタビュー調査― |
児玉 裕美,松井 聡子増山 純二,辻 慶子河村 洋子,中田 光紀 |
報告 | 尿検査試験紙の潜血項目に反応を示す疑似尿 ―看護学生の演習に使用するための簡便な作製方法― |
青木 駿介,太田 克矢 |
その他 | ストーリー型授業を基盤にした課題中心型学習の有用性の検討 ~看護学生の認知負荷と学習意欲による評価~ |
増山 純二,苑田 裕樹児玉 裕美,大村由紀美松井 聡子,野村あす美辻 慶子 |
その他 | ベテラン実習指導者の実践上の工夫を組み入れた実習指導者用パンフレットの作成 ―使用前後の困難感に関する検討― |
藤本美由紀,丹 佳子佐々木満智子 |
本研究は,ICT を活用した臨地実習指導者・大学教員との連携指導により,オンライン実習構築に向けた,実践的な実習のあり方を検討することを目的とした。対象は,令和4 年度看護学科に在籍し,母性看護学実習をオンライン実習で行った4 年生6 名及び指導を行った臨地実習指導者3 名とした。データ収集は,学生にはフォーカス・グループ・ディスカッションを行い,臨地実習指導者にはインタビューを行った。その結果学生からは,6 つのカテゴリー【実践的な看護の結びつき】【実際に経験できないケアに対する知識技術の補足】【既習の知識や技術の幅を広げた学習効果】【妊産褥婦からの反応が得られないことによる看護ケアの差】【実体験のないことによる学習の困難感】【実習内容の再構築の必要性】が生成された。臨地実習指導者からは,6 つのカテゴリー【学生指導内容と臨床看護の実際とのギャップ】【実際の指導場面や看護ケア見学の必要性】【演習における臨地実習指導者の介入】【オンラインにおける通信機器の工夫】【臨地での人員配置や環境調整】【臨地実習指導者の学びの機会】が生成された。これらの結果から,1.使用する通信機器と撮影方法の工夫,2.使用する機材や操作方法について事前に十分検討する,3.学生と臨地実習指導者が実習前から関わりの持てる機会を作る,4. 臨地実習指導者による妊産褥婦への指導の見学,など検討が必要であることが示唆された。
母性看護学実習 ICT オンライン実習
Maternity Nursing Practice,ICT,online training
新人看護師の看護技術習得における自己調整学習の構成要素を明らかにし,予見・遂行コントロール・省察の3段階のプロセスとの関連を検討した。分析の結果,予見の段階で新人看護師は【具体的な目標を持つ】【研修や先輩看護師の採血の手技から学ぶ】【看護技術を確実に身につけるための学習の工夫】などを通じて,実施前の準備を行っていた。遂行コントロールの段階では,【看護技術の経験を重ねることで方法の身体的な感覚を習得】し,繰り返しの経験を通じて技術を向上させていた。そして,省察の段階では【振り返りで手技の知識や技術を深める】ことで自己評価を行い,成功や失敗を分析し,次の目標設定につなげていた。また,【看護技術習得へのやる気】として,患者からの感謝や先輩の賞賛がやる気を高め,学習の継続を促していた。このように,新人看護師の看護技術習得プロセスは,自己調整学習の3 段階を循環的に繰り返しながら技術を習得していた。特に,経験を積むことが技術の向上につながり,次の学習意欲を高める重要な要素であった。
現場の指導者は,新人看護師が繰り返し看護技術を経験できる機会をつくり,具体的に考えさせるような振り返りを行うことが必要である。
新人看護師,看護技術,自己調整学習
Key Words:new graduated nurse, nursing skill,self-regulated learning
Midcareer nurses play a central role within organizations and are essential in supporting the quality of nursing care.
Simultaneously, they are frequently at a significant stage of life events, during which they may experience challenges related to their career development as nurses.
Therefore, providing career development support that fosters an environment wherein midcareer nurses can continue working throughout their careers and maintain or enhance their motivation toward their profession is crucial.
Focusing on participation in training as a form of career development support for midcareer nurses, we explored the types of training environments they prefer and the support needed to facilitate their participation in such training programs.
Interviews were conducted with 10 midcareer nurses who had experienced job turnover, and data were analyzed using content analysis based on Berelson's method.
Analysis results showed that six categories were formed from 133 recording units: “Satisfying individual learning needs,”“Having an internal system in place that facilitates participation in training,”“A workplace culture that encourages participation in training,”“Providing opportunities for consultation and exchange of opinions,”“Fostering interest in career advancement,”and “Offering training formats that are easy to attend.”
Results suggested that, as part of career development support for midcareer nurses, developing training programs that reflect their desired content and formats, creating environments and systems that make participation more accessible, and providing opportunities for midcareer nurses to consult and exchange opinions are essential. To ensure that midcareer nurses can continue their careers throughout their lives, urgently establishing feasible support systems for their participation in training is necessary.
中堅看護師, キャリア発達支援, 研修
Midcareer Nurses, Career Development,Support Training
我々は尿検査試験紙用の疑似尿を,入手の容易な市販品で簡便に作製する方法を検討している。これまでに,試験紙で検出できる5 項目(蛋白質,ブドウ糖,pH,ケトン体,比重)に反応を示す疑似尿を,種々の市販品(プロテインサプリメント,ブドウ糖タブレット,重曹,除光液,食塩)を材料として作製できることを報告した。しかし,看護師が臨床で扱う機会の多い「潜血」の項目については,適切な材料を市販品で選定できていない。そこで本研究ではこの選定を試み,「潜血」に加えて「蛋白質,ブドウ糖」の計3 項目に反応する演習用疑似尿の簡便な作製方法を検討した。この際,教育機関の設備の有無にできるだけ影響されず,迅速かつ大容量に作製できることも重要視した。また,尿検査試験紙(8 社)への汎用性も調べた。この結果,牛肉に水を加えて家庭用ミキサーで破砕するだけで「潜血項目に反応する抽出原液」が得られた。また,この「抽出原液」と「プロテインサプリメント」ならびに「淡黄色の清涼飲料水」を用いれば,多くの尿検査試験紙で,明瞭な3 項目の反応を示す演習用疑似尿を容易に作製できたので報告する。
疑似尿,潜血,尿検査試験紙,看護学生,体験学習
simulated urine, hematuria, urine test strips, nursing students, experiential learning
【目的】
A 大学看護学部1年生のストーリー型授業を基盤にした課題中心型学習について,認知負荷と学習意欲の程度を分析し学習の有用性を検討した。
【方法】
1回目調査の分析対象者は,2022 年度1 年次後期の科目「ヘルスアセスメント」の単元「バイタルサイン」を受講した学生57 名,2回目調査は,同じ科目の「呼吸・循環フィジカルアセスメント」を受講した学生48 名である。1回目調査では,認知負荷の評価指標を検討した。2 回目調査では,認知負荷の評価指標とARCS モデルに基づいたCIS(Course Interest Survey)日本語版尺度を用いて調査を行なった。
【結果】
認知負荷の評価指標の検討では,探索的因子分析(主因子法,プロマックス回転)を行い,「IL (Intrinsic Load;学習タスクの負荷) 」「EL(Extraneous Load;授業設計の不備への負荷)」
「GL(Germane Load;学習理解の促進) 」の3因子が抽出され,また,内的一貫性が確認された。2 回目調査の認知負荷の評価指標(0-10)では,IL の中央値3.50,EL .64,GL7.90 であった。CIS(1-5)の中央値は「A:注意」4.0,「R:関連性」4.0,「C:自信」3.50,「S:満足感」4.0 であった。IL とEL の相関係数はr=.50,IL とGL はr=-.33,EL とGL はr=-.47,EL とA はr=-.30,EL とS はr=-.33であり相関関係を認めた。
【考察】
ストーリー型授業を基盤にした課題中心型学習は,作業記憶内でEL が減少しIL にGL を最適化させ学習が促進することを示した。また,ARCSモデルの各項目は高い値を示し,EL の低値と関連していることから学習の有用性が示唆された。
課題中心型学習, 認知負荷理論,ID 第一原理, ARCS モデル
Task-Centered Learning,Cognitive Load Theory,First Principles of Instruction,ARCS Model
〔目的〕
作成したパンフレットを実習指導者に読んでもらい, 仮説(1)(2)を検証し,パンフレットの効果を検討することを目的とする。仮説は,パンフレット利用により(1)「実習指導者の指導上の困難感が低下する」,(2)「実習指導経験が少ない実習指導者の困難感が低下する」の2 つである。
〔方法〕
ベテラン実習指導者の実践上の工夫に関するインタビュー結果をもとに,困難感解決のためのヒントを含むパンフレットを作成した。実習指導者260 名にそのパンフレットを配布し,利用前後の実習指導上の困難感(以下,困難感とする)について自記式質問紙調査を行い,困難感と属性による変化を比較検討した。
〔結果〕
困難感は49 項目中44 項目において事前よりも事後の方が低く有意差が認められ仮説(1)は支持された。また,実習指導経験が少ない群において,事前調査では実習指導経験が多い群と比較して困難感が高く有意差がみられた項目が9 項目あったが ,事後調査ではその差がなくなっており,仮説(2)が支持された。
〔考察〕
これらの変化はパンフレット利用でベテラン実習指導者の実践上の工夫を知ることによる実習指導の意義や実習指導方法に関する知識の理解,自己の指導の振り返りや自信の獲得等によるものである可能性があると考えられた。これらのことから本パンフレットは,実習指導者の困難感を軽減する効果を有する可能性があることが示唆された。
実習指導者,パンフレット,困難感
practice supervisors, pamphlet,difficulties